EUV(極端紫外線)リソグラフィの開発、導入をめぐって競争を続けてきたIntel、Samsung Electronics、TSMCだが、ここのところIntelは、1歩引いて静観しているようだ。
EUV(極端紫外線)リソグラフィを適用した先進の半導体プロセス技術の競争が始まっている。だが、Intelは状況を静観しているようだ。
ASMLは2017年7月に、1基当たり1億5000万米ドルのEUVシステム21基を受注したことを明らかにした。同社は、注文の対応には2019年いっぱいかかるとしている。2017年3月に同社が発表したEUVスキャナー「NXE:3400B」は、生産準備が完了した初のEUVシステムとなる。
米国の市場調査会社であるVLSI ResearchのCEO(最高経営責任者)を務めるG. Dan Hutcheson氏は、「最大の問題はレンズの確保だが、Carl Zeiss SMTにはこれ以上の供給能力がない」と指摘している。Hutcheson氏は、2017年に納品されるシステムは8〜9基だとみている。
EUVシステムの開発は、数年単位で大きく遅れている。最近になってようやく、生産可能な状態になったばかりだ。これに加え、ファウンドリーが、これまで考えられていたよりも幅広い製造段階にEUVシステムを利用しようとしていることから、最先端の半導体メーカーからの需要が急増している。
Hutcheson氏は、「かつてはマスク層が1層〜2層のEUVシステムの導入が話題だったが、現在は5〜7層のマスク層のシステムもある」と述べている。
同氏は、2017年におけるEUV技術への投資(各社の合計)は、2016年の10億3600万米ドルから14億8200万米ドルに増加し、2019年には30億米ドルに達すると予測している。193nmのArF液浸ステッパーに対する投資額の3分の1が、既に使われているという。
Samsung Electronics |
Intel | TSMC | GLOBAL FOUNDRIES |
各社のEUV投資額 (合計) |
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2017年 | 170億 | 120億 | 100億 | 28億 | 14億8200万 |
2016年 | 115億 | 95億 | 102億 | 25億 | 10億3600万 |
出典:VLSI Technology |
Samsung ElectronicsとTSMCは、2018年にEUVリソグラフィを適用した製造プロセスの実用化を目指して競い合っている。しかし、匿名の情報筋によると、IntelはEUVに必要な材料を両社ほどは発注していないようだ。
SamsungとTSMCは、AppleやQualcommなどの顧客企業からの最先端チップの大量受注に対応するためにEUVへの移行を急いでいると考えられる。Intelのファウンドリー事業は両社に対抗できるレベルにはない。
Hutcheson氏ら数人の情報筋は、IntelのEUV導入の遅れについてはっきりとはコメントしていない。IntelもEUVの導入スケジュールについてはコメントを控えている。
Intelの広報担当者は、「当社は、EUV導入による費用対効果が得られる段階になれば、EUVを導入する構えだ。EUVリソグラフィによる製造への道のりは長い。大きな進展があった一方で、多くの課題も残っている。当社の業界パートナーやサプライヤーが、量産要件への対応と同様にEUVの導入に取り組むことが重要だ」とメールで述べている。
2017年6月、GLOBALFOUNDRIESのCTO(最高技術責任者)であるGary Patton氏は、EUV技術には課題が残っていると述べた。最も重要な課題として、マスクの欠陥を減らすことと、EUVウエハーを保護するペリクルを開発することを挙げている。
Hutcheson氏は「Intelが、“EUVを量産工程に初めて導入した企業”になることは恐らくないが、同社は当初、どの企業よりも多くのEUV装置を調達していた。Intelは今後、事前の品質検査により力を入れるようになるのではないか。EUVの導入を2018年に発表する企業も幾つかあるだろう。ただ、量産が本格化するのは2019年以降だと見ている」と述べた。
現在、EUVに関する著書を改訂中のVivek Bakshi氏は、Intelが1990年代の終わりに他社に先駆けてEUV開発に取り組んだ企業の1つであることに言及し、「EUV開発に投じられてきた年月を考えると、生産開始の時期が他社より半年もしくは1年早くなるなど、たいした問題ではない。今後2〜3年の間に、最先端技術を導入する企業であればどこでもEUVを導入するようになるのではないか」と述べた。同氏は2017年11月に、3〜5nmプロセスを用いるとみられる後続のEUVシステムについて、ワークショップを開催する計画だ。
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