メディア

iPhone 8の分解で垣間見た、Appleの執念この10年で起こったこと、次の10年で起こること(19)(1/3 ページ)

2017年9月に発売されたApple「iPhone 8」。iPhone 8の分解から見えたのは、半導体設計に対するAppleの執念だった。

» 2017年10月25日 11時30分 公開

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

「iPhone 8」のチップは“総入れ替え”

↑↑↑>>>連載一覧へ<<<↑↑↑

 2017年9月22日、Appleが「iPhone 8」「iPhone 8 Plus」「Apple Watch Series 3」「Apple TV 4K」を一斉に発売した。テカナリエは、発売当日に上記の製品を入手して分解およびチップ開封を行った。

 AppleやSamsung Electronicsの製品は、毎年発売と同時に入手して分解を行っている。2017年は発売日午前8時に製品を入手し、その後移動、9時に事務所にて分解、10時には基板から「A11」プロセッサチップを取り外し、午後一番にはチップ開封を完了させることができた。2017年秋のApple製品に関しては詳細なレポート*)を既に作成し発行中である。

*)テカナリエレポート136号:iPhone8分解、137号:Apple Watch3分解、139号:A11、MDM9655チップ解析、140号:Watch3 S3全チップ解析、145号:Apple TV 4K解析

 図1は、iPhone8 Plusの外観およびメイン基板の様子である。基板の形状、大きさはおおむね、2016年に発売された「iPhone 7」と同じであった。一部の報道ではiPhone 7とiPhone 8には大きな差がないとあるが、チップ面では大きな変更が多かった。メインプロセッサは「A10」から「A11」に変更されている。前者は16nmプロセスを採用したものだが、後者は10nmプロセスが採用されていて、周波数は7%向上し、電源電圧が7%削減、集積密度は実に86%もアップしている。

図1:「iPhone 8」の外観(クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 プロセッサだけでなく、電源ICやオーディオチップ、非接触型決済サービス「Apple Pay」向けチップなども、ほぼ全てが新しいチップに置き換わっている。キープコンセプトではあるが、各チップの1つ1つがブラッシュアップされたものになっているのだ。

 「iPhone X」発売前(2017年11月3日に発売)なので、iPhone Xの詳細は不明だが、現時点ではほぼ同じチップセットが基幹機能で使われるものと推測している。iPhone 7とiPhone 8およびiPhone Xにおいて同じチップは、ディスプレイ側に少々存在するだけで、図1のメイン基板上のチップは“総入れ替え”と言ってもよいものであった!!!

 弊社では基板の観察だけでなく、主要チップほぼ全てのチップ開封を行い内部の観察も行っている。図2に、iPhone 8のメインプロセッサA11とLTE Cat.16(DL Max 1ギガビット/秒(Gbps))のモデムプロセッサであるQualcommの「MDM9655」の外観および開封したチップの一部を掲載した。

 両プロセッサは、1つのパッケージに2つ以上のチップを収納するSIP(Silicon in Package)が採用されている。実際にはプロセッサ + DDRメモリが重ねて収められており、1パッケージ2チップ以上となっている。A11プロセッサは、LPDDR4メモリが4枚とプロセッサ、特性調整用の小シリコンが10個、パッケージ補強用のプレートが2枚入っており、1つのパッケージに17個もの部品が入っている。

図2:内部チップの専用化とSIP構造の比率(クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.