長年のライバルが、“歴史的な協業”を果たした。Intelのモバイル向け第8世代「Core」プロセッサに、AMDのGPUが内蔵されるのである。“NVIDIA対策”とも取れる今回の協業について、専門家たちの意見を聞いた。
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IntelとAMDは数十年にわたり激しいライバル関係にあったが、Intelの「Core」プロセッサとセミカスタムしたAMDのGPU「Radeon」、第2世代の「HBM(High Bandwidth Memory)」を1パッケージに統合した製品で協業を果たした。Intelの第8世代「Core」プロセッサである。
この動きは、AMDにとって成功であり、Intelにとっては成長に向けた道を模索する中で、競合企業との提携という新たなチャレンジに対する意欲を示すものとして、アナリストの間で1年以上にわたってうわさされてきた。両社の協業は、両社共通のライバルであるグラフィックスチップメーカーのNVIDIAに対する挑戦でもある。
米国の調査会社であるJon Peddie Researchでプリンシパルを務めるJon Peddie氏は、EE Timesのインタビューで、「Intelは、自社開発技術に固執せずにAMDとの提携に乗り出したことで、新たな姿勢を示した。同社は、非常に多くの企業の足かせとなっていた“自社開発主義”を見事に払拭(ふっしょく)してみせた」と語った。
米国の市場調査会社であるIC Insightsでシニアリサーチアナリストを務めるRob Lineback氏は、「グラフィックスとAI(人工知能)の両方を強化するNVIDIAの脅威が増大したことで、IntelとAMDの間で長く続いてきた争いが、かつてない提携関係へと変化した」と述べている。
Intelのクライアントコンピューティンググループ担当バイスプレジデントとモビリティクライアントプラットフォームのゼネラルマネジャーを兼務するChristopher Walker氏は、同社のWebサイトに投稿したブログで、「ゲームなどのアプリケーションを利用するPCユーザーからのハイエンドなグラフィックス機能の要請に対応できる、より薄く、軽量で、強力なノートPCを実現する機会を見極めた結果、AMDとの協業に至った。ヘビーユーザーのモバイルPCは、ほとんどがIntelの『Core H』シリーズプロセッサと高性能ディスクリートGPUを搭載しているため、厚さが平均26mmもあり、薄型化、軽量化が進む厚さ16mm以下のノートPCと大きな差がある」と述べている。
IntelとAMDは両社とも、共有メモリを利用する組み込みメモリを集積したプロセッサを有する。一方、Peddie氏によると、「真に高性能なGPUにはできるだけ広いメモリバスを備えた専用メモリが必要だが、Intelには独自のディスクリートGPUがなく、開発する計画もない」という。
米国の市場調査会社であるTirias Researchで主席アナリストを務めるJim McGregor氏は、「実のところ、Intelは、特にプロセス技術で苦戦を強いられているため、競争力のあるGPUを製造する余裕はない。ディスクリートGPU市場への参入を何度も試みているが、成功には至っていない」と述べている。
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