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IEDM 2017の講演2日目(12月5日)午後(その2):次世代トランジスタを狙う負性容量FET技術福田昭のデバイス通信(122) 12月開催予定のIEDM 2017をプレビュー(6)(1/2 ページ)

12月5日午後の注目講演を紹介する。負性容量トランジスタ、シリコンフォトニクス、非シリコン材料による高耐圧パワーデバイスなどの研究成果が発表される。

» 2017年11月24日 09時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]

12月5日午後のセッション23からセッション26までを概観

 前回に続き、技術講演の2日目である12月5日(火曜日)の午後の講演セッションから、概要と注目講演をご紹介する。今回は、セッション23からセッション26までを対象とする。テーマは、負性容量デバイスとスティープスロープデバイス(セッション23)、シリコン技術ベースの光エレクトロニクス(セッション24)、新世代デバイスのコンセプト(セッション25)、神経活性のモニタリング技術とDNA解析技術(セッション26)、である。

12月5日(火曜日)午後の技術講演セッション(その2)。セッション23からセッション26までの一覧(クリックで拡大)

二酸化ハフニウム強誘電体で負性容量トランジスタを作成

 まずセッション23では、負性容量トランジスタの研究成果に注目したい。負性容量トランジスタとは、「スティープスロープトランジスタ」と呼ぶ次世代トランジスタを実現する技術の1つである。従来のMOSFETでは電源電圧を下げると、「サブスレッショルド領域」と呼ばれる、オンとオフの中間領域で動かさざるを得なくなる。この領域では入力信号電圧の変化に対して出力信号電流の変化を大きくすることが求められるのだが、従来のMOSFETではこれをあまり大きくできない。

 そこで新しい原理によってサブスレッショルド領域での電流変化を急峻にするトランジスタ、「スティープスロープトランジスタ」が盛んに研究されている。負性容量トランジスタ(NC-FET)はその1つで、強誘電体をゲート絶縁膜に使う。強誘電体はゲート電圧の変化によって誘電率が大きく変化する。つまり、ゲート容量が変化する。強誘電体の誘電率が急速に小さくなると、ゲート容量が小さくなり(負性容量)、電流が大きく流れる。言い換えると、ゲート電圧をわずかに変化させることで、ドレイン電流を急激に増やせる。

 National Taiwan Universityを中心とする共同研究グループは、アルミニウム(Al)を添加した二酸化ハフニウム(HfO2)強誘電体をゲート絶縁膜に導入した、負性容量FETを試作した(講演番号23.3)。サブスレッショルド係数は、順方向が40mV/桁、逆方向が39mV/桁とかなり良好な値を得ている。Alを添加する濃度と、1000℃の高温アニーリングによって大きな残留分極と高い誘電率を実現した。

 Purdue Universityを中心とする共同研究グループは、2次元材料の二流化モリブデン(MoS2)と強誘電体の二酸化ハフニウムジルコニウム(HfZrO2)を組み合わせた負性容量FETを発表する(講演番号23.5)。サブスレッショルド係数は、順方向が37.6mV/桁、逆方向が42.2mV/桁であり、これもかなり良好な値を得ている。

12月5日(火曜日)午後の注目講演タイトル(その3) (クリックで拡大)
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