JOLEDが、RGB印刷方式で製造した21.6型4K有機ELパネルを製品化し、出荷を開始した。最初の製品はソニーの医療関連事業に納品されたという。JOLEDは、韓国勢が採用する蒸着方式では製造が難しい、中型パネル領域を狙う。
日本メーカーから、RGB印刷方式で製造した有機ELパネルがついに出荷された。
JOLEDは2017年12月5日、東京都内で記者説明会を開催し、同社のRGB印刷技術で製造した21.6型の4K(3840RGB×2160画素)有機ELパネルの出荷を開始したと発表した。印刷方式の有機ELパネルの製品出荷は「世界初」(同社)とする。本格的な量産開始は2019年を目指す。
精細度は204ppiで、ピーク時の輝度は350カンデラ/m2。コントラスト比は100万対1。消費電力は14.6W(40%Window/6500Kにおいて)。寿命は1000時間(350カンデラ/m2時)とする。同社は2017年4月からパネルを有償でサンプル出荷していたが、今回は製品として出荷を開始した(関連記事:JOLED、印刷法で21.6型有機ELを製品化、次は大型へ)。主な仕様は、サンプル出荷時と変わっていない。
JOLEDのCTO(最高技術責任者)兼CQO(最高品質責任者)を務める田窪米治氏は、12月5日に出荷されたパネルの量および価格は非公開としたが、出荷先についてはソニーの医療関連事業と明かした。
製造は、ジャパンディスプレイ(JDI)の石川工場(石川県川北町)の生産ラインで行う。ただ、同生産ラインはあくまでパイロットラインで、月産2000枚(21.6型は3面取りできるので、パネルとしては月産6000枚)と、製造の規模としては少ない。
JOLEDが狙うのは、12〜32型くらいの中型パネルの領域だ。同社の管理部門 広報チーム マネジャーを務める加藤敦氏によれば、この領域は「需要があるにもかかわらず、有機ELパネルとしては、まだ市場が形成されていないところ」だという。
有機ELパネル市場ではSamsung ElectronicsとLG Electonicsの韓国メーカーの強さが際立っているが、Samsungが強いのは5〜10型程度のスマートフォンやタブレット向けの小型領域、LGが強いのは50型以上などTV向けの大型領域で、その間がすっぽりと抜けているのである。これは、SamsungとLGが採用している製造法が、中型パネルには向かないからだ。
Samsungが採用しているFMM(Fine Metal Mask)-RGB蒸着法は、メタルマスクを使ってRGBを真空環境で成膜する方式だが、マスクが大型になると、成膜する時の位置ずれが大きくなってしまうという問題がある。一方のLGが採用している白色EL蒸着法は、RGBのEL(発光)層を縦に積層し、それらを白として発光させ(R+G+B=白)、カラーフィルターによってRGBの色を形成する。こちらはカラーフィルターを使用するため光の利用効率が悪くなり、省電力化も難しいので小型化が難しい。
田窪氏は、「蒸着法では難しい中型パネルで、われわれが市場を形成する」と意気込む。具体的には医療用などのモニターや大画面タブレット、デジタルサイネージ、車載用ディスプレイなどだ。
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