IoT(モノのインターネット)の活用が広がるとともに従来の「エッジ→クラウド転送→サーバ処理」では対応できない場面が増えつつある。エッジ側の処理能力向上が急務だが、そこには解決しなければならない問題が山積している。
クアルコムジャパンは、2017年12月15日に同社のIoT(モノのインターネット)事業戦略に関する説明会を都内で開催した。この説明会ではQualcomm本社のIoT事業担当役員を務めるRaj Talluri氏が日本の関係者に向けてIoTを構成するデバイスにおけるQualcommプロセッサの優位性を訴求した。
Talluri氏は、IoTの特徴として「多様性」というキーワードを掲げる。IoTは住宅設置機器やセキュリティシステム、交通インフラ制御に位置情報利用システム、さらには園芸など幅広い用途に広がり、その用途に合わせてスピーカーに眼鏡、時計、ネットワークカメラに信号、自動車、掃除機から土壌モニターと多種多様なデバイスがインターネットを通してネットワークに接続するようになった。このような状況において、IoT構成システムで現在最も重要なのが、セキュリティの担保だとTalluri氏は主張する。
IoTの進化に対するモバイル技術の影響もIoTのトピックとして取り上げた。「IoTの進化をけん引するのはモバイル技術だ」と述べるTalluri氏は、その根拠として、モバイル技術の進化がハイペースで進んでいることと、その進化がスマートフォンといった小型デバイスに統合されていることを挙げた。「モバイルデバイスでは稼働数16億台というスケールを背景に速いペースで技術革新が進んでいる。重要なのは、その新しい技術がスマートフォンのような小型デバイスに実装されていることだ。これがIoTに進化に貢献する」(Talluri氏)
IoTの普及を進める重要なステップとして考えている5G(第5世代移動通信)ネットワークについても、さまざまな企業と連携して開発を進めていると語った。Talluri氏は、幅広いデバイスをつなぐIoTのインフラとして5Gネットワークの遅延の少なさと拡張性、そして、信頼性を重要な優位性として評価するとしている。
続いて、IoTで接続するデバイスの処理に着目してIoTの進化を考察した。これまでのIoTのユースケースでは、それぞれのデバイスが接続する“先にある”クラウド、または、その奥にあるサーバでインテリジェンスな処理を実行してきた。しかし、現在は、デバイス側で処理を受け持つケースが増えている。身近な一例としてあるのがロボット掃除機で、より効率的な移動経路の立案をデバイス側で計算している。同様に、ネットワークカメラにおける画像認識やドローンにおける飛行姿勢の維持制御もデバイス側のインテリジェンスな処理の例として挙げている。
Talluri氏はデバイス側でインテリジェンスな処理が可能になるための条件として、次の3項目を示した。
(1)Perception(認知):デバイス周囲の状況を認知する。手段としては音声認識、画像認識を利用する
(2)Reasoning(推論):認知した周囲の状況から、何が起きているのか、どのような影響があるのか、どのように行動すべきなのかの推論と、その推論をするために必要な機械学習を実施する。このためには高度な演算能力が必要になる
(3)Action(実行):推論して求めた行動をデバイスを制御して実施する。これには、遅延なくデバイスを制御できる処理能力が必要になる
ここで取り上げた、認識機能、推論処理に人工知能(AI)を導入すべくQualcommでは10年前から取り組んでいる。2007年には最初の人工知能プロジェクトを立ち上げ、その後も人工知能、機械学習のノウハウを持つ企業との協業もしくは買収を重ねてきた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.