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量産車向けは絶対に明け渡さない――ルネサス呉CEO特集「Connect 2018」(3/4 ページ)

» 2017年12月26日 10時30分 公開
[竹本達哉EE Times Japan]

競合のM&Aで「短期的にルネサスは有利な立場になる」

――車載マイコンにおける競合であるNXP Semiconductors(以下、NXP)は最近、新たな車載マイコン製品群の発表を行いました。

呉氏 (NXPが2015年12月に買収した)Freescale Semiconductorは、車載マイコンに相当、力を入れていたと思う。

 けれども、われわれがIntersilを買収した理由の1つでもあるのだが、車載マイコンよりもアナログ周りの方が利益率は良いために、FreescaleがNXPの傘下に入ってからマイコンへの注力が弱まった印象を受けた。われわれがFreescaleの製品をリプレースする商談が相当、あった。

 今回のNXPの車載マイコン製品群の発表は、車載マイコンにカムバックするぞという宣言に見える。「こことここはやらない」と言っていたのが「再び全てやります」という宣言であり、脅威ではあるが、個人的には、またスタートラインについたなという印象を持っている。

――NXPは、Qualcommによる買収が控え、そのQualcommをBroadcomが買収しようとしています。

呉氏 研究開発に大きい額を投資できるプレイヤーが入ってくることは、脅威であり、決して過小評価してはいけないと考えている。

 ただ一方で、私も過去に経験があるが、国境を越えた企業間合併は、人の相性、社風が問題になる。

 ルネサスは、リストラなどを経て非常に苦労しながら、ボラティリティー(価格変動)の大きいコンシューマーエレクトロニクス市場から脱し、製品ライフサイクルが長く、信頼性が大切にされ、顧客と将来のロードマップを共有し、事業継続を約束する必要のある産業分野や自動車分野、家電分野に絞ったわけだ。

 対して、QualcommやIntelは、コンシューマーエレクトロニクス市場でめちゃくちゃにもうけるビジネスモデルを構築している。このビジネスモデルは、素晴らしいモデルであり、インサイドブラックボックスで圧倒的な市場シェアを握り、ものすごい収益を稼ぐ。ボラティリティーが大きくても、稼ぐ時に、むちゃくちゃ稼ぐ。そして撤退するのも早い。こうしたビジネスモデルは彼らの強みであり、彼らの経営判断も、彼らの株主の投資判断も、そうしたビジネスモデルに基づいて行われている。

 Intelが買収したMobileyeも同じで、インサイドブラックボックスで、ある分野で圧倒的なシェアをとっている。しかし、このビジネスモデルは、自動車の世界ではあまり好まれない。例えば、自動運転で事故を起こした時に、アルゴリズムがブラックボックスでは済まされない。また、自動車市場で収益を上げるまでに、デザインインから5年以上かかる。産業市場はもっと長いかもしれない。

 IntelやQualcomm、NVIDIAが(自動車市場や産業市場に)入ってくるには、人格を変える必要性がある。コンシューマーエレクトロニクスと、自動車や産業では、エンジニアのマインドセットや経営の価値判断基準が異なる。大きく基準が異なることを、1つの形態でやっていくことは相当難しいと思う。

 QualcommがNXPを買うかどうか、BroadcomがQualcommを買うかどうか分からないが、(買収が成立して)シナジーを短期的に発揮するのは相当に大変だろう。決しては過小評価すべきではないが、短期的には混乱が生じ、短期的にわれわれは有利な立場になるだろう。そこで、われわれがもたついていると勝てないので、われわれが機敏に動けるかどうかが重要になるだろう。

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