TSMCは、半導体メーカーのファブライト化や、HPC(High Performance Computing)向けチップの需要の高まりにより、堅調な成長を続けている。7nmや5nmプロセスの開発も順調だとする。
TSMCは、「当社では、高性能コンピューティング(HPC:High Performance Computing)がスマートフォンを置き換え、事業全体をけん引する重要な役割を担うようになった。暗号通貨マイニングで使われる半導体チップの需要などもこれに含まれる」との見解を明らかにした。
TSMCによると、低価格帯および中価格帯のスマートフォンは、現在も成長の兆しを見せているが、最新型のスマートフォンの売上高は横ばいの状態が続く見込みだという。世界最大のファウンドリーである同社は、Appleの新型「iPhone」に搭載されているアプリケーションプロセッサを独占的に製造する他、HuaweiやOppo、Xiaomiなど幅広い中国メーカーのスマートフォンに搭載されている半導体チップの製造も手掛ける。
TSMCの事業においては、HPCの定義の中には、AI(人工知能)やGPU、暗号通貨マイニングなどに向けたアプリケーションも含まれるとしている。TSMCは、「スマートフォンの需要が低迷していることを受け、HPC向け半導体が次第に勢いを増している。暗号通貨マイニングなどで使われているAI ASICは、GPUの売上高をある程度奪い取る可能性があるが、いずれのチップも、需要はかなり堅調だ」と述べる。
TSMCのチェアマンを務めるMorris Chang氏は、2017年第4四半期の業績発表の場で、「当社は、2018年も引き続き、半導体業界の成長をリードすることができると確信している。2017年の当社の年間売上高は、過去最高となる320億米ドルに達したが、2018年はその約15%増を実現したい考えだ。また、2018年の半導体業界全体の成長率は約8%と予測されているが、当社のファウンドリー事業の成長率は、約10%を見込んでいる」と述べている。
Chang氏は、「TSMCが業界トップの成長率を実現することができた背景には、IDM(垂直統合型半導体メーカー)がアウトソーシングを拡大していくという、新しい傾向がある」と指摘する。
同氏は、「どのIDMも、ほぼ例外なくファブライト化を進めており、今後その動きをさらに強めていくだろう」と述べる。
TSMCの共同CEOであるMark Liu氏は、「IDMは現在、主に90nmプロセス以降での製造についてファウンドリーを頼るようになってきている。TSMCが新たにIDMから受けるアウトソーシングは、大半が車載半導体になるとみられる」と述べている。
TSMCは、UBS銀行のアナリストであるBill Lu氏の、「ファウンドリーは現在、供給が不足する傾向にある」とする見解に同意しながらも、2018年の設備投資費を、前年から大きく増加させるつもりはないようだ。2018年における同社の設備投資費は、109億米ドルで、2017年の108億米ドルからほとんど変わっていない。今後数年間は、設備投資費を105億〜110億米ドルの範囲で維持していく予定だという。
TSMCの最新の10nmプロセス技術は、Appleの新型「iPhone X」向けアプリケーションプロセッサ「A11 Bionic」を、ほぼ独占的に製造するためにTSMCが開発した技術だ。2017年第4四半期には、TSMCの売上高全体の25%を占めるまでになった。
ただし、2018年第1四半期の売上高全体に占める10nmプロセスの割合は、スマートフォン市場の季節的な要因もあり、低下する見込みだという。TSMCは、「一部の顧客企業は、10nmプロセスから7nmプロセスへの移行を進めているが、2018年の10nmプロセスの売上高は、アプリケーションプロセッサやセルラーベースバンドプロセッサ、ASIC CPUなどの需要に対応することで、増加するとみられる」と述べる。
TSMCは引き続き、28nm/22nmや16nm/12nmなどの旧世代技術に関しても、低消費電力化や高性能化に取り組んでいる。同社は、「これまで5年以上にわたり、28nmプロセスが当社の“ドル箱”だったが、今後数年の間に、22nmプロセスが、28nmプロセスを超える重要な役割を担うようになるだろう」と述べている。
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