埋め込み不揮発性メモリの記憶容量は、おおむね小容量、中容量、大容量、超大容量に分類される。今回は、小容量と中容量の埋め込み不揮発性メモリについて、用途や利点・欠点を解説する。
国際会議「IEDM」の「ショートコース(Short Course)」から、車載用の埋め込み不揮発性メモリに関する講座「Embedded Non Volatile Memories for Automotive Applications」の概要をご紹介している。講演者は半導体ベンダーSTMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)のAlfonso Maurelli氏である。
なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
前回は、マイコン(マイクロコントローラーあるいはマイクロコンピュータ)を自動車用に開発するときの要求仕様、すなわち車載用マイコン製品への要求仕様を説明した。今回は、埋め込み不揮発性メモリの記憶容量に対する要求仕様の違いから、応用システムと実現技術を解説する。
システムLSIやSoC(System on a Chip)などが埋め込む不揮発性メモリには、いくつかの実現技術が存在する(関連記事:「組み込み不揮発性メモリーの正しい選択」※EDN Japanのサイトに移動します)。システムLSIやSoCなどを組み込む用途の違いによって、最適な不揮発性メモリ技術を選択する必要がある。
選択の条件となるのは、まずは記憶容量だ。おおむね、小容量(low capacity)、中容量(medium capacity)、大容量(large capacity)、超大容量(very large capacity)に分類できる。それから速度(遅延時間とスループット)と消費電力、コスト(製造コスト、設計コスト、検査コスト)、信頼性などの条件を考慮しなければならない。
記憶容量が少ない、小容量(low capacity)の埋め込み不揮発性メモリは、セキュリティ認証コードや大容量RAMの冗長ブロックアドレスの管理、アナログ回路の特性調整などに使われる。実現技術には、レーザーヒューズ、アンチヒューズ、シングル多結晶シリコンFTP(Few Time Programmable) EEPROMなどがある。
これらの不揮発性メモリは、CMOSロジックの製造プロセスに、マスクをほんのわずかだけ追加することで、ロジックのシリコンダイに埋め込める。マスクの枚数がまったく増えない、完全互換のプロセスもある。ただし弱点もある。書き込み回数が極めて少ない。レーザーヒューズとアンチヒューズは1回限りである。FTP EEPROMでも、多くて1000回前後にすぎない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.