Uberの自動運転車による死亡事故を受け、自動運転技術の開発におけるシミュレーションの重要性が、より高まるのではないだろうか。
Uberのロボットカーが2018年3月22日(現地時間)、深夜に走行中、道路を横断していた女性をはねて死亡させるという、とんでもない過ちを犯した。これを受け、「自動運転車開発コミュニティーは今後、現実世界の公道上で実施した試験走行の距離数よりも、シミュレーションに関する詳細を説明するようになるのだろうか」という、「100万米ドルの疑問」ともいえるような非常に難しい質問が提起されている。
Siemens(シーメンス)は当然、業界においてシミュレーションに対する意識が今後も高まり続けていくことを期待しているのだろう。
同社は2018年3月27日、米国シカゴで開催した技術イベントにおいて、自動運転システム開発に向けた新しいシミュレーションツールを発表した。Uberのアリゾナ州テンペの事故からわずか10日後のことだったため、発表のタイミングとしてはあまり良くなかったといえる。
Siemensは、「当社の新しいシミュレーションツールは、大掛かりなプロトタイピングの作製を最小限に抑えながら、自動運転車の安全性を実証するために必要な走行距離を、劇的に削減することが可能だ」と主張する。
技術顧問サービスを手掛けるVision Systems Intelligence(VSI Labs)の創業者であり、主席アナリストを務めるPhil Magney氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「自動運転車ソリューションの開発や検証、性能などを加速させなければならないというプレッシャーの高まりを受け、自動運転車の開発メーカーは、シミュレーション技術をますます重要視するようになってきた」と述べている。
Mentor Graphics(Siemensが買収)のADAS/AD担当ディレクターを務めるAmin Kashi氏は、EE Timesの電話インタビューの中で、「路上で数百万マイルもの試験走行を実施したとしても、完璧な地上検証データを得るのは不可能だ」と述べる。
また同氏は、「現実世界の環境下で発生した事象について正確に検証するためには、通常、安全確保のために同乗しているドライバーが、信号機や停止線のある場所でデータに注釈を付けることになる。また、このような作業を走行中に行わなければならない場合もある。さらに、走行している自動運転車の前方に存在する街灯や子どもとの距離が、31フィート(約9.4m)なのか、または29フィート(約8.8m)なのかというような地上検証データを把握するためには、膨大な量の確認作業が必要だ。しかし、これをシミュレーションで行うことができれば、正確な距離を把握して、何が起こったのかを判断することが可能になり、データに注釈を付ける必要がなくなるだろう」と述べている。
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