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台湾、“アジアの虎”をはるかに超えた存在へ中国からは恩恵も圧力も……(1/2 ページ)

台湾は、急速な経済成長によって、エコノミストが「アジアの虎」と好んで呼ぶ国の1つとなった。そして現在、同国は先端技術のエコシステムにおいて、これまで以上に中心的な役割を果たすようになっている。

» 2018年05月18日 10時30分 公開
[Bolaji OjoEE Times]

 もはや台湾を「アジアの虎*)」とは呼べないだろう。「虎」という呼び方には、否定的な含みもあるからだ。だが、今や絶滅危惧種となってしまったトラとは異なり、台湾は、急速な経済成長によって、エコノミストが「アジアの虎」と好んで呼ぶ国の1つとなった。そして現在、同国は先端技術のエコシステムにおいて、これまで以上に中心的な役割を果たすようになっている。

*)1950〜1990年代に急速な工業化を遂げ、さらに、非常に高い成長率を維持した韓国、シンガポール、香港、台湾の4国を「アジアの4頭の虎」と呼んだ。

 世界最大の半導体ファウンドリーであるTSMCをはじめ、エレクトロニクス産業の著名なプレイヤーの中には、台湾に本社を置く企業がいくつかある。Foxconnや、電子部品の主要な販売業者であるWPG Holdingsも、台湾を“故郷”と呼んでいる。機器メーカーにとっても、台湾はPCB(プリント基板)の主要な供給元である。さらに、台湾には、スマートフォンやデスクトップPC、ノートPC用ディスプレイの最大のサプライヤーの1つであるAU Optronicsも拠点を置いている。

 急速に変化する環境の中、また、他のエレクトロニクス大国との競争に直面する中、台湾が21世紀をさらに深く進んでいくには、継続的な協業関係が不可欠だ。

中国からの圧力

 皮肉なことに、台湾は、台湾経済の直接的な受益者である中国からのプレッシャーにも直面している。中国の電子部品組み立て分野やサプライチェーンにおける優位性の一部は、台湾企業によって生じたものでもある。台湾企業が最先端のファウンドリーサービスを武器に、半導体市場に深く参入していった背景には、中国が既に組み立てや生産分野で主導権を握っていたことがある。

 現在、そして今後数年間の台湾を支える礎は、政府や民間セクターの歴代のリーダーたちによって、何十年も前に築かれたものである。

 かつてのリーダーたちは、台湾を世界トップレベルの経済国の1つとして繁栄させるため、地政学的な障壁の克服に挑んだ。さらに、台湾は主要な天然資源に恵まれていないため、技術分野に不可欠な専門知識を開発することへと舵を切った。

 やがて台湾は、TSMCの創設者であるMorris Chang氏をはじめとする、先端技術のリーダーたちが期待した以上の成功を遂げた。Chang氏は米国スタンフォード大学と米国マサチューセッツ工科大学を卒業後、TSMCを設立し、同社を世界トップの半導体サプライヤーに育て上げた人物である。

TSMCの創設者でチェアマンのMorris Chang氏 出典:TSMC

 Chang氏は、87歳を迎える1カ月前となる2018年6月に、TSMCでの地位を離れる予定である。Change氏の引退は、台湾をエレクトロニクス大国に作り上げた“古参兵たち”の時代の終わりを告げる出来事だといえよう。同国のエレクトロニクス産業の新たなリーダーたちは、Chang氏がTSMCを設立した30年前に克服したものとは、少し違った課題に直面している。

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