TSMC、MediaTek、Foxconn――。小さな国ながら、エレクトロニクス業界では多くの優良企業を抱える台湾は、いかにしてエレクトロニクス産業を成長させ、生き抜いているのだろうか。
1980年代、台湾の産業は日本の陰に隠れて低迷していた。日本企業や官僚は自ら掲げた誇大広告に心酔し、「ジャパン・アズ・ナンバー・ワン」と自画自賛していたものだ。一方、トウ小平氏による経済改革は、十数年間の迷走を経て、中国を世界レベルの重要なプレイヤーにした。
それから30年を経て、台湾が、主にTSMCにけん引される形で、世界第3位のチップ供給国の地位を得たことは、よく知られている。
同様によく知られているのが、TSMCの創設者であるMorris Chang氏のサクセスストーリーだ。台湾政府は1980年代に、当時Texas Instruments(TI)で勤務25年目のベテラン重役だったChang氏をヘッドハンティングし、台湾に連れ戻した。同氏はその後1987年に、TSMCを設立した。「ファウンドリー専業」というビジネスが成り立ち得るとは、当時は誰も信じていなかった。
だが、中にはほとんど知られていないエピソードもある。電気工学部の学生として、1980年代の台湾の半導体産業の夜明けを目の当たりにしたある若者は、その後国立台湾大学の電気工学部教授となり、今では台湾の科学技術省(MOST:Ministry Of Science and Technology)長官になっている。
EE Timesは最近、かつてのこの“若者”だったLiang-Gee Chen氏へのインタビューを行った。
Chen氏は、MOST内にある長官室でインタビューに応じる中で、電子工学を学ぶ若い学生として台湾の半導体産業の幕開けを最前列で目にし、どのように感じたのかについて、穏やかな語り口で話してくれた。
EE Times:インタビューに応じていただき、ありがとうございます。米国から戻られたばかりと聞きました。
CLiang-Gee Chen氏:その通りだ。サンフランシスコ、ロサンゼルス、ニューヨーク、ボストンを訪問した。人材を探し、台湾の教授職をオファーするためだ。われわれは台湾の大学に300件の教職を用意しており、米国にいる学生や博士を台湾に招へいしたいと考えている。科学技術省は教育省とともに、特別な制度の準備を進めているが、その制度では5年間の研究助成金の他、学生や博士を十分取り込めるほど高い給与も支払われる。
EE Times:どのような人材を求めているのですか。
Chen氏:AI(人工知能)や電気工学など、科学・技術分野の教授職を提供しているが、一般教養分野でもポジションを用意している。
EE Times:海外から人材を招く理由は何ですか? 台湾には十分に優れた教授はいないということでしょうか。
Chen氏:われわれは、世界の中心は台湾ではなく米国であると認識している。われわれが求めているのは、新たな技術やビジネス、産業のアイデア、経営スキルについて教えてくれる人材である。
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