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成長するMEMS市場、勢力図も急速に変化Broadcomがシェアトップに(2/3 ページ)

» 2018年06月12日 10時30分 公開
[Junko YoshidaEE Times]

MEMSの進化

 Mounier氏は、「1980〜1990年代におけるMEMSの初期段階のころを振り返ると、MEMSは、機械的動作や圧力、衝撃などを検知することが全て、という基本的なセンサーだった。センサーとしての精度は、あまり高くはなかった」と述べる。

 同氏は、「2000年以降は、MEMSで使われるエレクトロニクスや材料が改善されたことで、センサーの精度が向上した他、ジャイロセンサーや可視光センサーにも適用されるようになった。2000年半ばには、MEMSを用いたマイクロフォン(マイク)や赤外線センサーなどが登場し始めた」と説明する。

 つまりMEMSは、まずは物理センサーから照明管理(マイクロミラーなど)へ、そして赤外線センサー(マイクロボロメーター)へと移行してきた。MEMS開発は、マイクを使った音によって進展してきたともいえる。

Eric Mounier氏

 Mounier氏は、「MEMSやセンサー開発は現在、超音波やハイパースペクトル、無線周波数などの検知機能を実現し、人間の能力をはるかに超えようとしている」と続ける。

 現在、MEMS市場において最も注目を集めているのは、センサーフュージョンだ。Mounier氏は、「MEMSは、複数のセンサーを1つのパッケージに統合することにより、周囲の環境を認知できるようになった」と説明する。

 ここで忘れてはならないのが、複数のセンサーを組み合わせ、統合することによって、ユーザー側は、「センサーパッケージのソフトウェアは、センサーデータを組み合わせて、特定のレベルの情報を生成できるはずだ」という期待が生まれてくる点だ。次なるマイルストーンは、センサーとAI(人工知能)を融合させることである。

 センサーフュージョンが、自動車やスマートフォン市場において高く評価されているのは紛れもない事実だが、業界では、同技術をどの分野に適用すべきかをめぐり、対立が続いている。センサーにかなり近い部分でデータを処理する企業もあれば、遅いデータフュージョンを提唱する企業もある。Mounier氏は、業界における論争は当分の間続くとみているようだ。

 2017年におけるセンサーデバイス別の売上高は、第1位がCMOSイメージングで134億米ドル、その後にRFやレーダー、指紋センサーなどが続く。

 しかし、2023年に最速のセンサーとなる可能性が最も高いのは、3D(3次元)センサーだ。Mounier氏は、「ライダーの需要が高まっていることから、3Dセンサーの年平均成長率は、40%に達するだろう」と予測する。

勝者と敗者が頻繁に入れ替わるMEMS市場

 MEMS製品は、市場原理によってけん引され、非常に幅広い。このため、MEMSメーカーの間で勝者と敗者が変化しやすい傾向にある。

 BroadcomのMEMS事業は現在、RF MEMSのおかげで拡大の一途にあるといえる。

 市場第2位のBoschも、最も安定したMEMSメーカーとしての座を維持している。Mounier氏は、「Boschは、コンシューマー市場と自動車市場という2つの対照的なMEMS市場に対応することで、リスクを分散させる戦略をとっている。安定した成長を維持することに成功したといえるだろう」と分析する。

 Mounier氏は、「一方、STMicroelectronicsのMEMS事業は、さまざまな課題に直面している。その主な要因の1つとして挙げられるのが、同社にとってAppleが唯一の最大顧客であるという点だ」と述べる。STMicroelectronicsはこれまで、自動車や産業向けのMEMS市場に新風を吹き込もうと試行錯誤してきた。

 現在注目を集めているMEMSメーカーの1つであるKnowlesは、売上高が横ばいの状況にある。主に、MEMSマイク市場における競争の激化が要因となっているようだ。

 Texas Instruments(TI)も、同社にとってマイクロミラーが唯一のMEMS製品であるために、苦戦しているようだ。Mounier氏は、「TIの成功は、ライダーにかかっている。マイクロミラーがライダーで採用されることになれば、TIのMEMS事業は今後、大きく変化していくだろう」と指摘する。

 2017年、STMicroelectronicsはHPのインクジェット事業から恩恵を受ける形で、MEMSのトップファウンドリーとしての地位を維持した。

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