ArmはIoT(モノのインターネット)デバイス向け有償サービス事業を成長させる取り組みの一環として、IoTデバイスのコネクティビティ管理ツールのプロバイダーである英国のStream Technologiesを買収した。
ArmはIoT(モノのインターネット)デバイス向け有償サービス事業を成長させる取り組みの一環として、IoTデバイスのコネクティビティ管理ツールのプロバイダーである英国のStream Technologiesを買収した。IoTサービスはまだ創成期にあるが、最も好調な分野の1つとして大きな可能性を秘めているとみられている。
Stream Technologiesは2000年に設立された非公開会社で、同社のコネクティビティ管理ソフトウェアとサービスは、77万台のIoTデバイスで使用され、1日に2テラバイトのトラフィックを伝送しているという。同社は主にセルラー向けにサービスを提供しているが、特定のネットワークに依存せず、IoT向け無線通信技術「LoRa」や衛星ネットワークもサポートしており、IPおよび非IPデータの伝送が可能である。
Stream Technologiesは、アセットトラッキングやスマートメーター、英国のナショナルレールのシステムなど、幅広い用途に向けたサービスを展開している。具体的には、課金サポートサービスやセルラーIDとして機能するソフトウェアベースの組み込みSIMカード(eSIM)などを提供している。Armは2018年2月に、ArmコアにeSIMの搭載するための「Kigen OS」というソフトウェアをリリースしている。
Armは、同社のIoTデバイスプラットフォーム「Mbed」にStream Technologiesの製品を統合する計画だという。Armは、Stream Technologiesの買収額や同社の収益、始まったばかりの自社のIoTサービス事業の規模については具体的な数字を明らかにしなかった。
Armは、親会社のソフトバンクの後押しを受けて、大きなシェアを握るプロセッサコア市場とは異なる分野への進出に注力している。今回の買収は、この取り組みの一環だと思われる。Armは既に、IBMと提携して、Mbedを搭載するデバイスをIBMの「Watson Cloud」に接続し、IoTデバイスの管理とデータ分析を行うサービスを展開しており、今後もこうした提携を進める計画だという。
ArmのIoTクラウドサービスグループでゼネラルマネジャーを務めるHima Mukkamala氏は、同社のIoTサービス事業について、「クラウドサービスを構築して収益を上げ、オープンな環境の生成に向けた提携を進めていく計画だ」と述べている。
米国の市場調査会社であるVDC Researchで組み込み研究担当バイスプレジデントを務めるChristopher Rommel氏は、「IoTサービスは、あらゆる企業が追い求める魅力的な分野だ」と語る。
Rommel氏は、今回の買収の前にStream Technologiesについて耳にしたことはなかったが、この取引を支持しているという。
同氏は、「Armは、IoTサービス向けのソフトウェアやツールで好位置につけた。同社の課題は、独自のサービスとパートナーのサービスをバランスよく提供することだ。IoTサービスに注力するのは正しい判断ではあるが、同市場は複雑でライバルも多い」と述べている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.