日系各社は中長期的な戦略を立案する上でさまざまな課題を抱えている企業が多いように思う。経営陣と現場のコミュニケーションが十分に取れていないことが原因ではないか、と思われるフシが散見されるのだ。電機大手各社を例にとって、過去10年間の変遷を見ながら、各社がどのような経営を行ってきたのか。そして、今後の見通しはどうなのか、について考えてみたい。
本連載の前回記事(=AIの活用方法について考える)で、「AIの進化は今後の10年をどのように変えるか」についてコメントさせていただいた。多くの日系企業が外資系企業に比べてAI対策で後れを取る中、警笛を鳴らす意味でのコメントだったが、AIに限らず、そもそも日系各社は中長期的な戦略を立案する上でさまざまな課題を抱えている企業が多いように思う。経営陣と現場のコミュニケーションが十分に取れていないことが原因ではないか、と思われるフシが散見されるのだ。電機大手各社を例にとって、過去10年間の変遷を見ながら、各社がどのような経営を行ってきたのか。そして、今後の見通しはどうなのか、について考えてみたい。
下図は、大手電機8社の過去10年間(2008年度から2017年度)の当期利益推移を表したものである。
2008年9月にリーマンブラザーズ証券が破綻した影響、いわゆる“リーマンショック”によって、各社の業績は2008年10月以降大幅に悪化した。大手電機8社のうち7社が赤字決算に陥り、かろうじて黒字を計上できたのは三菱電機だけ、という悲惨な状況であった。
当時は「100年に一度の大不況」などと言われ、不況の長期化を心配する見方もあったが、幸いなことに世界経済は2009年後半から回復し始めた。ところが、2010年ごろから家電メーカーの試練が始まる。パナソニック、シャープ、ソニーがいずれもデジタル家電関連事業を中心に巨額の赤字を計上するようになり、3社とも抜本的な経営改革を余儀なくされたのである。特にシャープの財務体質の悪化がひどく、株主資本率が急速に下落し始めた(下図)。2015年度には債務超過に陥り、台湾企業鴻海の傘下に収まったことは記憶に新しい。
各社の株主資本率の推移を見ても、この10年間で順調に改善を続けているのは三菱電機だけ、というのが現状である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.