CPUコアにおいて、多くの分野で高いシェアを誇るArmだが、AI(人工知能)エンジン向けチップのコアでは、独壇場とはいかないようだ。
プロセッサコア市場では現在、クライアント上でマシンラーニング(機械学習)を行うことを想定した十数種類の製品が、SoC(System on Chip)への搭載をめぐって競争を繰り広げている。スマートフォン向けに設計されている製品も既にある。Armが新製品の発表を間近に控えていることから、さまざまな企業が、いち早く市場に投入することを狙っている。
米国の市場調査会社であるThe Linley GroupのアナリストLinley Gwennap氏は、米国カリフォルニア州サンタクララで2018年4月11〜12日の日程で開催された年次イベント「Linley Processor Conference」においてEE Timesのインタビューに応じ、「現在、機械学習向けチップの開発競争は、低消費電力のクライアント側への搭載を狙う方向に移行しつつある。しかし、データセンター向けの高性能チップをめぐる競争に関しては、まだほんの初期段階にすぎない」と述べている。
同氏は、「ArmはCPUだけでなく、GPU市場でも優勢を確保してきたが、AI(人工知能)エンジンは、CPUコアベンダーにとって全く新しい市場となっているため、Arm以外のメーカー各社が有利なスタートを切っている状況にある」と続ける。
既存のデザインウィンの多くは、携帯電話機市場全体の約3分の1を占めるプレミアムスマートフォンにみられる。Gwennap氏は、「AIアクセラレーションは今後2〜3年の間に、携帯電話機市場における、残りの全ての分野に波及していくだろう」と予測する。
AIチップのターゲット市場としては、スマートフォン市場以外では、自動車市場が期待されている。この他、PCやタブレット、IoT(モノのインターネット)機器などの市場が挙げられる。
Armは後れを取り戻そうと、2018年2月に「Project Trillium」と呼ぶ包括的な取り組みを発表した。しかしGwennap氏は、「Armが競争力を確保する必要があるのは、電力効率を最適化することが可能な、特殊なハードウェアアクセラレーターの分野である」と述べる。
「Armは、このようなアクセラレーターの開発を進めており、2018年夏には最初の製品を発表できる予定だとしている。しかし実際のところ、Armが後れを取ったことで、新しい企業に市場参入のチャンスが生まれている」(同氏)
Armは2017年10月に、機械学習グループを設立したと発表した。また2018年2月には、今後の計画に関する詳細をいくつか明らかにしたところだ。
同社は、米国シリコンバレーで2018年10月に開催する予定の年次イベントにおいて、製品の詳細を明らかにするとみられる。ただし、ニューラルネットエンジンとCPUとの間には必ずしも密接な関係があるわけではないため、Armが巻き返しを図ることができるという保証はない。
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