富士フイルムは2018年6月14日、新たなスピーカー技術である「φ(ファイ)」を開発したと発表した。同技術は、同社が独自開発した電気音響変換フィルム「B.E.A.T.」をスピーカーの振動板に採用。このスピーカーユニットを直方体の4面に設置し、スピーカーを中心とした360度全方向に均一な音場を形成できることが特長だ。
「写真フィルムで培ってきた技術を使って、理想のオーディオ用スピーカーを開発する」
富士フイルムは2018年6月14日、新たなスピーカー技術である「φ(ファイ)」を開発したと発表した。同技術は、同社が独自開発した電気音響変換フィルム「B.E.A.T.」をスピーカーの振動板に採用。このスピーカーユニットを直方体の4面に設置し、スピーカーを中心とした360度全方向に自然な音場を形成できることが特長だ。
なお、スピーカー技術「φ」を用いて試作されたスピーカーは、オーディオ展示会「OTOTEN 2018」(2018年6月16〜17日、東京国際フォーラム)で、展示と試聴会が開催された。その模様もお届けする。
このスピーカー技術で最も注目すべきは、圧電効果を利用する電気音響変換フィルム「B.E.A.T.」だ。
一般的なスピーカーは、コーン紙などの振動板を磁石とボイスコイルで振動させることで音を発生させる。よって、振動板の素材が音質に与える影響は大きく、振動の伝搬速度と振動を減衰させる内部損失の2点が、スピーカーの音質にあたり重要な物性となる。
振動板の伝搬速度が低い場合、音の立ち上がりが遅く高音域の再生が不得手なスピーカーユニットとなり、内部損失が小さい場合は音の立ち下がりが遅く共鳴音や固有音など不要なノイズが発生する。
そのため、幅広い音域で共鳴音や固有音などを排したクリアな音質を実現するためには、高い伝搬速度と大きい内部損失を両立する振動板が求められている。「B.E.A.T.」では、圧電セラミックス微粒子を粘弾性ポリマーに分散、塗布し、これを電極層で挟み込む振動板構造を採る。この「B.E.A.T.」は、スピーカーユニットへかまぼこ状に設置され、その裏に吸音材を配置する。これにより、スピーカーの音質に影響する逆位相の音を吸収する効果があるという。
「φ」を搭載したスピーカーでインパルス応答の測定を行ったところ、波形の立ち上がりと立ち下がりがどちらも0.1ミリ秒以下と、高速なレスポンスを示した。さらに、残響の減衰速度高速化も達成したという。
開発を担当した同社説明員は、「富士フイルムが写真フィルム製造で培ってきた技術の内、無機微粒子の形成、分散、塗布といった技術がスピーカー開発で生きている。他のピエゾ素子と比較しても優れた性質を持っており、セラミックス振動板の良いところを残しつつ、悪いところを消した」と語る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.