今回のテーマは「子育て」、とりわけ、働き方と深く関わってくる、保育園の待機児童問題です。少し前に取り上げた「女性の活躍」と切っても切り離せず、かつ深刻を極めている問題なのですが、政府の対応がうまくいっておらず、また、実は“当事者意識”を持ちにくい問題となっていることが、数字から見えてきました。
「一億総活躍社会の実現に向けた最大のチャレンジ」として政府が進めようとしている「働き方改革」。しかし、第一線で働く現役世代にとっては、違和感や矛盾、意見が山ほどあるテーマではないでしょうか。今回は、なかなか本音では語りにくいこのテーマを、いつものごとく、計算とシミュレーションを使い倒して検証します。⇒連載バックナンバーはこちらから
「保育所落ちた 日本死ね」とは、保育園に入園できなかった子の母親とされる人物が、その思いをブログに書きつづった文章のタイトルです。
このブログは、2016年2月に作成され、同じ立場にある保護者の共感を得ることになったのですが、このタイトルが本当に広まった理由は、その後の国会や政府の(総理大臣や議員)の非常にまずい対応*)でした。
*)首相発言「本当か確認しようがない」、国会のヤジ「誰が書いたんだよ」など。
「働き方改革」を推進する政府・与党にとって、この対応は致命傷となりました。保育所問題に本当に困っている保護者たちを本気で怒らせてしまったからです。世論は政府批判の嵐となり、その後、政府は弁明(謝罪?)に終始することになりました。
プロセスはどうあれ、「この『保育所落ちた 日本死ね』が"保育所"、"待機児童"という言葉と概念を世間に認知させたという点において、この一連の騒ぎには大きな意義があった」と、私は思っていたのですが ―― 今回の、このコラムの執筆で
―― 私自身の認識が、甘っちょろく、全くお話にもならない
ということが、分かってきました。詰まるところ、私も、不勉強な首相や、ヤジを飛ばした議員と、同程度に無知だったことを思い知らされることになったからです。
「保育園落ちた 日本死ね」の一件があろうがなかろうが、それ以前から、この問題は深刻な社会問題であり、今なお、解決には程遠い状況にあるからです。
今回調べてみたところ、"保育園"、"待機児童"のワードは、「保育園落ちた 日本死ね」が登場するずっと以前から記事のタイトルとして登場し続けていることが分かりました。Googleトレンドで2004年までさかのぼって調べてみたのですが、2004年の時点で、既に、このグラフと同じ傾向が観測され、そして、年々、その数が増加の一途をたどっています。
つまり、この問題は、政府を批判し続けていれば、そのうち、有権者に媚(こび)を売って、当選を確保したい立候補者たちがなんとかしてくれる ―― という類(たぐい)の問題ではなかったのです。
今回、この問題を、日本の現在の社会を「システム」として把握して、数字を使って解析を試みてみたところ、この問題は、本質的に解決できないものであることが分かってきたのです。
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