自動車のヘッドランプを始めとして、各種の光デバイスに関して高い技術力を持つスタンレー電気。同社で先進技術担当取締役を務める貝住泰昭氏に、未来の自動車で生まれる光デバイスのビジネスチャンスを聞いた。
技術革新が続く自動車業界。エレクトロニクスが深く関わる自動車の「電動化」「自動運転」「コネクティビティ」といったキーワードは、自動車を取り巻くトレンドとして既に見慣れたものとなっており、今後これまで以上に自動車業界とエレクトロニクス業界は接近していくだろう。
EE Times Japanでは「エレクトロニクスメーカーが展望する自動車の未来」と題し、各社の車載事業を統括するトップに対してインタビューを行っている。
今回は、自動車のヘッドランプをはじめとして、各種の光デバイスに関して高い技術力を持つスタンレー電気にスポットライトを当てる。同社で先進技術担当取締役を務める貝住泰昭氏に、未来の自動車で生まれる光デバイスのビジネスチャンスを聞いた。
EE Times Japan(以下、EETJ) 現在、そして将来の自動車ではエレクトロニクスの存在が必要不可欠となっています。進化が続く自動車の技術トレンドについて、スタンレー電気ではどのような点に注目されていますか。
貝住泰昭氏 自動運転やEV(電気自動車)など、新しい自動車の実現を行政と自動車業界が一丸となって推し進めている。業界内でもOEM(=自動車メーカー)と(部品を納入する)サプライヤーが連携し、新しい自動車に求められる技術を鋭意開発しているところだ。
その中でも、自動運転は特に注目すべき技術革新だ。現時点でも、一部の道路や施設を対象として「レベル3」の自動運転を行う実証実験が始まっている。この分野について、スタンレー電気でもOEMと議論を進めている。
EETJ スタンレー電気にとって、自動運転はビジネスチャンスになるということですか。
貝住氏 そうだ。自動運転はビジネスチャンスだ。
そもそも、人間が運転する自動車は安全面において不完全なもの。不完全なものだからこそ、OEMとサプライヤーが協力して、自動車をより安全なものへと改善していかねばならない。
この安全面の課題について、一例を挙げよう。運転中のドライバーは絶えず自車の周囲に気を配り、障害物や歩行者、他車など注意を払うべき対象を認識している。その認識は、ドライバーが対象を見ているからこそできるものだ。しかし、夜間走行など対象が見えにくい場合には認識もできないし、ドライバーが対象を見ているはずなのに、見過ごして認識していないこともある。ドライバーだけでなく歩行者に対しても、自動車の接近を認知させることは非常に重要だ。
ランプ事業を中核とするスタンレー電気は、光を使ってドライバーや歩行者などの交通に安全を提供することが理念だ。光の見え方など人間工学に基づいてランプ開発を行っており、見えないものは気付かない、見えていても気付かないということをなくしていく必要がある。
自動運転では、多様なセンサーが車に搭載されることになる。われわれは、車両側のセンサーから得られたデータをヘッドランプに転送、処理するアプローチで、より高機能で安全なヘッドランプシステムの開発を行っている。この機能を搭載したランプは、2023年ごろの商品化を予定している。
また、ランプはカメラなどセンサーの光源としても重要な役割を担っており、歩行者や他車など外部の交通と自動車がコミュニケーションを図るツールとしても、ライティングは有望な手段だ。
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