新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)らの研究グループは、CIGSをベースとした光触媒を開発。これを用いて、水素生成エネルギー変換効率12.5%を達成した。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)は2018年8月、東京大学とともにCu(In1-x、Gax)Se2(通称:CIGS)をベースとした光触媒を開発し、水素生成エネルギー変換効率12.5%を達成したと発表した。
NEDOとARPChemは、太陽光のエネルギーを利用して、水から生成した「水素」と工場などから排出される「CO2」を合成して、エチレン(C2)やプロピレン(C3)、ブテン(C4)といった基幹化学品を製造する人工光合成の研究を行ってきた。このプロセスにおいて、光触媒のエネルギー変換効率をさらに向上することが課題となっていた。
研究グループは今回、太陽電池の材料として用いられているCIGSをベースに、太陽光のスペクトル強度がピークとなる可視光領域(波長400n〜800nm)の光を吸収する光触媒材料を開発した。ここで注目したのがカルコゲナイド系材料である。特にCIGSは、赤外領域の太陽光まで利用できるという特長がある。しかも、p型半導体であるCIGSの表面にn型半導体を成膜、pn接合すれば高い量子効率を得られることが知られている。
研究グループはこれらの知見を参考に、2つの工夫を行った。1つは新規組成のCIGS開発である。これにより、高負荷条件ではCIGSとn型半導体の間の障壁が原因で電子が注入されにくくなるという課題をクリアし、世界最高レベルの水素生成反応を達成した。もう1つは電解液の成分などを最適化した。これにより水素を効率的に得ることが可能になったという。
これらの工夫により、水素生成エネルギー変換効率は最大12.5%を達成した。この数値は非単結晶光触媒として世界最高の変換効率だと主張する。
研究グループは、新開発のCIGSをベースとした水素生成光触媒と、従来のBiVO4からなる酸素生成光触媒を用い、タンデム配置した2段型セルを組み立てた。これに疑似太陽光を照射して水の全分解反応を確認した。この結果、太陽光エネルギー変換効率は3.7%となった。2016年に開示した数値に比べて、効率は23%改善されたという。
研究グループは引き続き、性能を高めた酸素生成光触媒の開発などに取り組む。これを今回開発した水素生成光触媒と組み合わせ、2021年度には太陽光エネルギー変換効率10%の達成を目指す。
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