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最大の半導体製造装置市場となった「ドライエッチング」とは湯之上隆のナノフォーカス(1) ドライエッチング技術のイノベーション史(1)(2/3 ページ)

» 2018年09月19日 11時30分 公開

ドライエッチング技術は誰が発明し、誰が普及に貢献したのか

 このように、ドライエッチングは、半導体の微細化および、その量産に必要不可欠、かつ重要な技術となった。

 しかし、ドライエッチング技術の発明と普及の歴史、つまりイノベーション史は、その専門家の間でも、あまり正確に知られていない。そこで、本稿を含めた5回の連載により、「ドライエッチング技術のイノベーション史」を明らかにすることを試みる。

 第1回の本稿では、改めて、ドライエッチング技術とは何かを定義する。

 第2回では、主として特許検索により、誰が、プラズマを用いたドライエッチング技術を発明したかを明らかにする。

 第3回では、ドライエッチング技術の発明者(インベンター)が、なぜ、イノベーターになれなかったかを考察する。

 第4回では、ドライエッチング技術普及の最大の課題となった、プラズマに起因するチャージングダメージを、誰がどのように解決したかを詳述する。

 第5回では、前述したマルチパターニングやアトミックレイヤーエッチング(ALE)など、最先端のドライエッチング技術を紹介する。

 第6回の最終回では、現在のドライエッチング技術が遭遇している問題を明らかにするとともに、今後の展望を述べる。

ドライエッチングとは何か

 Intelが、1970年に1KビットDRAMを、1971年に4004プロセッサを、立て続けにリリースした。そのころのトランジスタサイズは10μmであり、そのパターン形成には、薬液を用いたウエットエッチングが使われた。

 ウエットエッチングは、数十枚から数百枚のウエハーを一度に処理できるが、エッチングが当方的に進むため、垂直なパターンが形成できない(図3)。従って、1μm以下の微細化は困難だった。

図3:等方性エッチングと異方性エッチングの違い(クリックで拡大)

 この問題を解決したのが、プラズマを用いて一つの方向のみにエッチングが進む(これを異方性という)特長を持ったドライエッチング技術である。前述した通り、このドライエッチング技術を、誰が発明したかについては、連載第2回に詳述する。

 ここでは、この連載で取り上げる“ドライエッチング”とは、正確にはどのような技術を指しているかを、図4を用いて説明する。

図4:ドライエッチングとは何か(クリックで拡大)

 ドライエッチングの範囲には、イオン衝突を利用するスパッタエッチング、反応性ガスを利用するガスエッチングおよび、プラズマエッチングがある。そして、プラズマエッチングの中に、異方性を実現したリアクティブ・イオン・エッチング(RIE)がある。

 従って、図1に示したように、露光装置を超えて最大市場となったドライエッチング装置とは、正確には、RIE装置であるといえる。そして、本連載で取り上げるドライエッチングとは、厳密な定義は、RIEのことである。ただし、半導体業界では、ドライエッチングという言葉がポピュラーとなっているため、本連載ではドライエッチングを使う場合が多いが、それはRIEを意味することにする。

 また、一部の半導体メーカーでは、RIEというと、平行平板型のプラズマ装置を指している場合がある。しかし、次節で述べるRIEの原理は、誘導結合型プラズマ(ICP)装置やマイクロ波プラズマ装置でも、共通している。それ故、本連載でRIE装置(またはドライエッチング装置)といった場合は、平行平板型のプラズマ装置に限らず、異方性エッチングが可能な全てのプラズマ装置を指すものとする。

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