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FPGA時代から脈々と受け継がれる“XilinxのDNA”とはプラットフォームに舵を切っても(1/2 ページ)

米国でユーザーカンファレンス「XDF(Xilinx Developer Forum) 2018」を開催したXilinx。EE Times Japanは、日本の他のメディアとともに社長兼CEO(最高経営責任者)であるVictor Peng氏にインタビューを行い、Xilinxの方向性や、同社の新しい製品カテゴリーである「ACAP(Adaptive Compute Acceleration Platform)」の定義などを尋ねた。

» 2018年10月09日 09時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

 2018年10月1〜2日の2日間にわたり、米国カリフォルニア州サンノゼで開催されたXilinxのユーザー向けカンファレンス「XDF(Xilinx Developer Forum) 2018」。Xilinxの社長兼CEO(最高経営責任者)であるVictor Peng氏が発した最も強いメッセージの一つは、「FPGAベンダーを脱却し、プラットフォームを提供するカンパニーへと変わっていくこと」だった。

 そうしたメッセージや、XilinxがXDF 2018にて「Versal」として発表した製品「ACAP(Adaptive Compute Acceleration Platform)」(関連記事:必要なのは“適応力”、Xilinxが7nmプラットフォーム「Versal」を発表)について、複数の日本のメディアとともにPeng氏にインタビューを行った。

「ACAPの定義」

――Xilinxは、プラットフォームカンパニーへと変わっていくということで、幅広い分野に適した製品を提供できるようになるのだと思うが、組み込み市場について、今後はどのくらい注力していくのか。

Victor Peng氏 XDF 2018の基調講演では、Xilinxの戦略として「データセンターファースト」や「コアマーケットを加速する」というのを挙げた。この“コアマーケット”の中には、もちろん組み込み市場も含まれている。われわれの製品は既にさまざまなアプリケーションで使用されている。重要なのは、こうした既存のユーザーが再設計することのないようにすることだ。そのため、「この市場はターゲットにする、こちらの市場からはもう手を引く」ということではなく、既存のユーザーを引き続きサポートしながら、新規顧客も積極的に取り込めるようにしていく。

 業界では7nmの最先端プロセスに向かって進んでいるが、それにもかかわらず、Xilinxは数年前に(新たな)28nm製品をテープアウトした。それは、7nm製品を特に望んでいない、ローエンドFPGAを顧客もいるからだ。28nmプロセスを適用した「7シリーズFPGA(「Virtex-7」や「Kintex-7」など)」へのニーズもまだまだある。われわれにとって、数世代前の古いプロセスを適用したローエンド製品のユーザーも、ハイエンド製品のユーザーも、等しく貴重な存在だ。

 ローエンドからハイエンドまで、スケーラブルな製品を提供できることが、顧客にとって重要だと考えている。

――今回「Versal」シリーズとして発表したACAPだが、one-size-fits-all(全てに万能)なチップを作ろうとしているのか。

Peng氏 “one-size-fits-all”という表現は、少し違う。Versalでは、今回発表した「AI Coreシリーズ」「Primeシリーズ」の他に4シリーズをラインアップしていることからも分かるように、われわれがACAPで目指しているのは、ターゲットとなる分野に合わせてアーキテクチャレベルで拡張できるようにすることだ。ACAPはモジュール型のSoC(System on Chip)なので、自動車から、ハイエンドのデータセンターや通信まで、用途に合わせて回路ブロックを構築し、AI CoreシリーズやPrimeシリーズなどのようなサブファミリーを作りやすい。

――“ACAP“の定義をあらためて聞かせてほしい。「Armコアベースのプロセッサ」、動的に再構築できるファブリック部分である「Adaptable Hardware」と「Intelligent Engine」、これら全ての要素を持っていないと、「ACAP」とは呼べないのか。将来のバージョンでは、例えばArmプロセッサを持たないACAPが登場する可能性はあり得るのか。

Peng氏 非常にシンプルに定義するのであれば、ACAPの基本というのは、”SoCである”ということのみだ。デュアルコアかクアッドコアか、などは一切関係なく、とにかく“SoC”というのが最低限の定義である。ただし、必要な要素としては、プログラマブルなファブリック、ロジックやインターコネクト、メモリブロック、DSPエンジン、そしてこれらをつなぐNoC(Network on Chip)が挙げられる。

「ACAP」の構成要素 出典:Xilinx(クリックで拡大)

 もう一つ強調したいのは、“XilinxのACAPはVersalである”ということだ。われわれとしては、ACAPはいつまでもXilinxの”専売特許”というわけではなく、いずれは他の企業も似たような製品を出してくるだろうと考えている。FPGAもXilinxが発明したものだが、他のメーカーからもたくさんのFPGAが出てきた。ACAPもそれと同じだ。当社のFPGAがKintexやVirtexであるのと同じように、われわれのACAPはVersalなのだ。

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