Armは、最新のエッジプロセッシングを搭載した組み込みIoT(モノのインターネット)デバイスの開発向けに、低価格で「Cortex-A5」ベースのLinux対応ASICを開発するための取り組みを発表した。
Armは、最新のエッジプロセッシングを搭載した組み込みIoT(モノのインターネット)デバイスの開発向けに、低価格で「Cortex-A5」ベースのLinux対応ASICを開発するための取り組みを発表した。1年間当たり7万5000米ドルという低価格のライセンス料を支払えば、Armの「DesignStart」プログラムを介して、ArmのIP(Intellectual Property)へのアクセスが可能になる他、1年間の設計サポートを得ることができる。
Armは、「開発者コミュニティーから、Linux対応Armプロセッサにもっと簡単にアクセスできるようにしてほしいという要望を受け、低価格ライセンスを提供することになった」と述べている。EE Timesが2017年に、組み込み市場に関する調査を行ったところ、開発メーカー全体の82%が、次の設計開発でLinuxかAndroidを使用することを検討しているという結果になった。
Armのポートフォリオプロダクトマネジメント担当ディレクターを務めるPhil Burr氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「DesignStartにCortex-A5を追加することにより、ASICをより簡単に開発できたり、ArmのLinux対応プロセッサを簡単に利用できるようになる。組み込みLinux利用者に向けて、Armコアへのアクセスを広く拡大していく予定だ」と述べている。
Cortex-A5プロセッサは現在、ウェブポータル経由で簡単にアクセスすることができ、契約も簡素化されているため、拡張および設定可能な「Armv7-A」アーキテクチャのプロセッサを使用してSoC(System on Chip)を迅速に開発することができる。
今回の発表は、中国で2018年10月29日に開催される「Arm Tech Symposia 2018」とほぼ同じタイミングだった。このイベントは、今後数週間をかけて、台湾や韓国、インド、日本でも引き続き開催される予定だ。
Burr氏は、今回の発表が、2018年10月16〜18日に米国サンノゼで開催されたArmの技術者向けイベント「Arm TechCon 2018」ではなく、中国でのArm Tech Symposia 2018において行われた理由について、ArmのDesignStartプログラムの中の「Cortex-M0」と「Cortex-M3」のライセンシーのうち、40%以上が中国メーカーで、中国は非常に重要な市場であるためだ。しかしライセンスに関しては、中国との合弁事業ではなく、Armが世界規模で提供する予定のようだ」と述べている。
Armは、「Cortex-A5をDesignStartに追加することにより、開発者たちは、大規模なエコシステムだけでなく、自社製品を構築することが可能な土台にもアクセスできるようになる。プロセッサは、設置面積が小さく(40nmプロセスで0.3mm2以下)、超高効率(40nmプロセスで有効電力〜100μW/MHz)であるため、製造コストを削減できる他、Cortex-AベースのCPUの中でも最も低いアイドル電力を実現可能だ。
Cortex-A5の性能は、「Cortex-A7」「Cortex-A9」「Cortex-A32」の70〜80%にとどまる。最先端のSIMD(Single Instruction Multiple Data)データ処理が可能な、フルコヒーレントのクアッドコア設計として設定したり、マシンラーニング(機械学習)やカスタムプロセッサへの高速接続に向けた高性能アクセラレータポートとして設定したりすることなどが可能だ」と述べる。
Armによると、180nmから7nmのプロセス技術を適用したCortex-A5の出荷数量は、20億個を上回るという。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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