今やプロセッサと電源制御ICは必須の組み合わせの一つになっており、プロセッサを手掛ける多くのメーカーはプロセッサと電源ICの両者を自身で手がける方向へと進んでいる。Appleも当然ながらプロセッサと電源の両者を今後はセット化していくことになる。そもそも電源ICとプロセッサを自社内でキット化できていないメーカーは今や少数派。Qualcomm、MediaTek、Intelらもキット化、中国メーカーでもHiSiliconやSpreadtrum、Rockchip、Leadcoreらもプロセッサと電源ICを自社内でキット化できている。この部分のキット化ができていないプロセッサメーカーは依然として日本には多い……。
図4は、iPad ProとiPhone XRそれぞれのプロセッサに組み合わされるDRAMを開封した様子である。ともにLPDDR4(X)メモリがプロセッサのDDRインタフェースに接続される。インタフェースの個数はプロセッサチップを観察すると明確になる。A12Xでは8個、A12では4個である。インタフェースブロックの数と一致するメモリチップがそれぞれ用いられている。
A12X側では、2つのパッケージに分かれて、1パッケージに4枚重ねのDRAMが存在する。トータルで8チップが接続されている。一方A12は、パッケージ内で2枚重ねが2個並び、トータル4チップとなっている。このような使い分け、作り分けは多くのメーカーでもやっていることではあるが、これほど短時間にいろいろなバリエーションを作っているのは現状、Appleを筆頭に数社だけである。Appleの開発力のすさまじさを改めて確認できるものだ。
ちなみにiPhone XS、XRのA12プロセッサを両方開封してプロセッサ、DRAMともに比較したがハードウェア的には完全一致の同じものであった。
今冬はiPhoneのみならず、2画面スマホやGoogle Pixel 3、HUAWEI Mate20など、話題のスマホが続々と誕生しており、相変わらず半導体進化のバロメーターの最上級の一つであるスマホの分解、解析の手を抜けない状況だ。
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ルネサス エレクトロニクスや米国のスタートアップなど半導体メーカーにて2015年まで30年間にわたって半導体開発やマーケット活動に従事した。さまざまな応用の中で求められる半導体について、豊富な知見と経験を持っている。現在は、半導体、基板および、それらを搭載する電気製品、工業製品、装置類などの調査・解析、修復・再生などを手掛けるテカナリエの代表取締役兼上席アナリスト。テカナリエは設計コンサルタントや人材育成なども行っている。
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