図2は、今回対象のiPad ProとiPhone XRの顔認証用インカメラのユニットとメイン処理基板を取り出したところである。ともにドットプロジェクタ、700万(7M)画素のRGBカメラ、IRセンサーを備えている。これらは顔認証に使用される。これらのカメラ、センサーのデータはプロセッサに送られ、NPUで機械学習されている。
iPad ProとiPhone XRは図2下部のようなバー形状の基板で通信処理、プロセッシング処理が成されている。iPad Proには十分なスペースがあるので、基板は片面にのみ半導体が実装されている。いわゆる片面実装であり、基板は一般的なスマートフォンに比べ薄くなっている。スマートフォンはiPhoneに限らず、限られた面積、体積の中に多くの部品を詰め込むので、iPhone XSのように2階建て構造の基板を使うものもあるが、従来の1階建て構造の基板を用いる多くの機種も基板の両面に半導体や部品を配置する両面実装が必ず成されている。タブレットはその点では片面実装が多い。
図3は、iPad Pro、iPhone XRに採用されるApple製のプロセッサ。左側がiPad Pro用の「A12X BIONIC」。右側がiPhone XRの「A12 BIONIC」(iPhone XS/XS Maxと同じ)である。先に述べたように、この2つのプロセッサは演算器の数が異なっている(正確にはインターフェースやディスプレイコントローラも別物)
演算性能はiPad Pro向けのA12Xが高い。そのために演算器数を増やし大きな面積をとっている。ちなみにテカナリエでは両プロセッサの配線層を取り除き内部を顕微鏡でくまなく調べて面積比率や構成の比較を行った。ともにTSMCの7nmプロセスを用いたもの。CPUやGPU、NPUの一つ一つのコア形状は同じであった。すなわち1コアを設計し、それをコピーして2コア、4コアと展開する設計手法を用いているようだ。NPUやカメラISPなどもサイズ、形状もA12、A12Xともに同じであった。
iPad Proに採用されるA12X には2つの機能が1つのパッケージに収まっている。プロセッサとDRAMだ。横置きされ、プロセッサ部だけに金属リッドが施され、メモリはモールド封止されたものが設置される。お互いはチップ下のガラスエポキシ基板を介して接続される。iPhone XRのA12は1つのパッケージにプロセッサとDRAMが積層されている。なお、A12のパッケージには、TSMCのInFO(Integrated Fan-Out WLP)技術が用いられる。
詳細は掲載しないが、両パッケージともプロセッサ、DRAM以外にも性能に寄与するシリコン部品が収納されている。図3の下部は、A12X、A12それぞれのプロセッサ用の電源制御ICだ。ともにDialog Semiconductor製の電源ICが使用されている。なお、Appleは2018年10月にDialogの一部事業を買収すると発表した(関連記事:Apple、DialogのPMIC事業を6億米ドルで買収)
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