自動車OEMとティア1サプライヤーは、競争に打ち勝つためにも、業界における最も革新的設計を実現する上でのSoCの重要性に気付かねばなりません。
自動車メーカー(OEM)とティア1サプライヤーはここ最近、極めて異例な状況に置かれています。革新的テクノロジーの出現と、高度運転支援システム(ADAS)および、自動運転車市場の急成長が、従来の自動車設計プラットフォームを完全にひっくり返しているからです。さらに、コンピュータビジョンから3Dマッピング、LiDAR(ライダー)、ディープラーニングに至るさまざまなテクノロジーが、自動運転車を現実のものにする過程で統合と衝突を繰り返しています。社会的観点から見たときにこの転換がリスクの高い賭けだと言えるのは、文字通り人の命がかかっているからです。
TeslaとUberの車が引き起こした致命的な事故は、自動運転車の開発にはシステムレベルでの細心の注意が必要だということを改めて思い出させてくれます。自動車OEMはテクノロジーの転換期に直面し、もはやティア1サプライヤーと従来通りの取引ができなくなっています。
自動車OEMとティア1サプライヤーはそろそろボンネットの下にあるもの(表からは見えない重要な部分)に注意を払っても良い頃です。自動車製造に携わる全ての関係者が、自分たちのテクノロジーを実現する半導体の選定に対し真剣になるべきです。最近ではADASも自動運転アプリケーションも、汎用CPU、GPUで実行される非常に複雑なソフトウェアベースの製品から、ハードウェアアクセラレータを介したディープラーニングやニューラルネットワークなどの高度なテクノロジーを搭載したカスタムSoC(システムオンチップ)ソリューションへと移行しています。すでにADAS開発者らは、数千行から数百万行に上ることさえある「肥大した」ソフトウェアコードから、ハードウェアで自動運転タスクを処理できるよう設計されたSoCへとシフトしています。これにより、システム内で必要とされるソフトウェアコードの行数が大幅に減少し、ひいては機能安全上のリスクが低減します。ADAS市場のパイオニアであるMobileyeは、ソフトウェア要件がハードウェアアーキテクチャに反映されたヘテロジニアスシステムを実装することにより、大半の車の実際的な出力限度内で安全性を確保するというSoC設計に移行して成功を収めました。
自動車OEMとティア1サプライヤーは、競争に打ち勝つためにも、業界における最も革新的設計を実現する上でのSoCの重要性に気付かねばなりません。SoC設計の根幹をなすテクノロジーを理解することから始めるのもいいでしょう。例えば、SoC設計の全ての部分とつながっていて、今では機能安全やQoS(Quality of Service)といったシステムレベルのフィーチャに欠かせない要素となっているインターコネクトもその一つです。オンチップインターコネクトはIPブロックと通信サービスの大部分を処理しながら、全てのハードウェアアクセラレータを適時に有効化します。これによる処理帯域幅の増加と、システムレイテンシおよび、消費電力の低減が、ADASと自動運転アプリケーションの機能安全フィーチャを補完することにつながります。
機能安全の促進においてSoCインターコネクトが重要な役割を担っている理由は、それがチップ上のデータの全てに関与するからです。したがって、オンチップ通信は全ての機能安全要件を満たす上で不可欠なビルディングブロックだと言えます。機能安全規格「ISO 26262」に準拠して開発されたインターコネクトIPを選択することで、OEMとティア1サプライヤーは自動車向けチップの機能安全規格適合判定に費やされる人月を何カ月も節約することができます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.