2018年、メモリ市場の成長に暗雲が立ち込め、メモリ不況が避けられない事態となった。アナリストらは、メモリの過剰供給による価格の下落を要因として指摘しているが、どうも腑に落ちない。そこで筆者は、Intelの10nmプロセスの遅れという点から、メモリ不況の要因を探ることにした。
2016年以降、メモリ市場が爆発的に成長を始め、“スーパーサイクル”という言葉が流行した。ところが、2018年に入ると、メモリ市場の成長に暗雲が立ち込め、スーパーサイクルどころか、もはやメモリ不況は避けられない事態となった。
これについて、TrendForceなどの調査会社や多くのアナリストたちは、「メモリメーカーがやみくもに設備投資を行ったため、メモリが供給過剰となり、価格下落を引き起している」というような分析をしている。
しかし、本当にそうなのだろうか?
人類が生み出すデジタルデータは指数関数的に増大し、東京五輪が開催される2020年には44ZB(ゼタバイト=1021)になるといわれている。また、2020年には、ネットにつながるデバイスが500億個を超え、世界を1兆個のセンサーが覆うと予測されている(図1)。
これらのビッグデータが、世界中のデータセンタにストレージされつつある。そのためには膨大な数のサーバが必要であり、それには大量のDRAMやNAND型フラッシュメモリが必要である。それにもかかわらず、メモリが供給過剰となっており、価格が下落している。どうにも、腑に落ちない。
そこで、本稿では、予想に反してメモリ不況が到来した原因を考察する。筆者の結論を先取りすると、メモリ不況を引き起こした原因は、2016年以降、10nmプロセスの立ち上げに失敗し続けているIntelにある。Intelのプロセッサが供給不足となったために、メモリが市場にあふれ、価格下落を引き起したと分析している。
2015年1月から2018年8月までの半導体種類別の月額売上高の推移をみると、メモリ市場の爆発は2016年4月から始まったことが分かる。このとき、49.2億米ドルだったメモリ市場は、2017年12月には約2.6倍の126.6億米ドルに成長した。
ところが2018年に入ると、メモリ市場が乱高下するようになった。下落したのは、1月、4月、7月である。つまり、3カ月に1回の割合で、メモリ市場が大きく落ち込んでいることが分かる。
その結果、2016年4月〜2017年12月まで毎月の平均成長率約8%とすさまじい勢いで成長していたメモリ市場が、2018年以降は毎月平均成長率約2%、とその成長が鈍ってきた。
では、なぜ、2018年に入って、このように、メモリ市場の成長に陰りが見えてきたのだろうか? 以下では、NANDフラッシュとDRAM市場の動向を見てみよう。
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