Huaweiの経営幹部がカナダで逮捕されたことを受け、エレクトロニクス業界にも衝撃を広がっている。Huaweiをめぐり、米中による全面対決の姿勢がいっそう濃くなっている。
筆者は2018年11月に中国を訪れた際、現地と欧米の技術業界の経営幹部たちが、「米中間の貿易交渉において緊張が高まる中、Huaweiが関与することになれば、“戦い”が勃発するだろう」と懸念しているのを耳にした。だがこの時彼らは、Huaweiの副会長兼CFO(最高財務責任者)を務めるMeng Wanzhou(孟晩舟)氏がカナダで逮捕されたことについて話していたのではない。
Meng氏が逮捕されてからのさまざまな動きについて衝撃を受けたのは、筆者1人ではないだろう。気掛かりなのは、Huaweiをめぐる新しい動きによって、予期せぬ結果が生じているという点だ。
前述した、「“戦い”が勃発するだろう」と彼らが話していたのは、Meng氏の逮捕ではなく、米国政府が2018年初めにZTEに対して行った制裁措置について言及していた*)。
*)米国政府は後に、この禁止措置を解除し、中国の通信会社に対して、米国企業の重要部品やソフトウェアなどを入手することを許可している。
世界各国のCEOたちの間では、「もしこの時の制裁措置が、ZTEではなくHuaweiに課されていたら、中国と米国との間で全面戦争が勃発していただろう」とする見方でほぼ一致している。
それから1カ月後となる2018年12月現在、さまざまな企業の経営幹部たちの根も葉もない臆測が、今まさに本物の危機へと発展しようとしている。
しかし、臆測がさらに進んでしまう前に、今分かっている事実についていくつか取り上げてみよう。
まず、起きたことを時系列で整理してみたい。ロイター通信をはじめ、さまざまな情報源によると、最新情報は以下の通りとなる。
2つ目は、現在の状況に至るまでの経緯について。Huaweiの創業者の娘であるMeng氏は、なぜカナダで逮捕されたのだろうか。
カナダは、米国からの要請を受けて同氏を逮捕した。米国側は同氏に対して、「イラン関連の取引をめぐって、多国籍銀行に対して詐欺行為を行い、米国の制裁措置に違反する危険を冒した」と主張している。
より正確に言うと、今回の件は、ロイター通信が2013年に報じた事例に関連している。当時の報道によると、香港に拠点を置くSkycom Techが、米国とEUの禁止措置に背き、イランに対して米国製の機器を販売しようとしたにもかかわらず、HuaweiはSkycom Techとの間で、密接な協業関係にあったという。
そして3つ目は、今後さらに、どのようなことが明らかになるのかという点だ。
問題の鍵は、カナダの法廷にある。もし裁判官が、Meng氏に対する申し立て内容が十分であると判断すれば、カナダの司法大臣は、同氏を米国に引き渡すかどうかを決定しなければならない。ロイター通信は、「その場合Meng氏は、米国から、複数の金融機関に対して詐欺行為を行ったとする罪に問われ、それぞれの嫌疑に対して、最高で30年の判決を受けることになるだろう」と報じている。
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