メモリ市況がボトムに向かって降下している中で、決してパッとしなそうな2019年。そんな中で、半導体メーカーや電子機器メーカー各社はどんなことに留意しながら戦略立案するべきなのだろうか。市況が好転するタイミングをひたすら待つだけで良いのだろうか――。
この連載の執筆を始めたのが2018年1月。今からちょうど1年前である。あっという間に過ぎた1年でもあり、さまざまな出来事があった1年でもあるように感じられる。自分なりに総括すると「年初は期待が強かったが年末は不安が広がった」というやや残念な流れだったように思う。事実、この原稿を書くに当たり、なるべく景気の良い話題を紹介しようとしているのだが、懸念材料の方が多くて年初にふさわしい内容がなかなか思い浮かばないのだ。こんな書き出しで誠に申し訳ないが、今年2019年の市況見通しについて思うところを述べさせていただくことにする。
1年前、2018年1月の記事を振り返ると、「サーバ、スマホ、そしてIoTで高成長を維持! 電機/半導体業界2018年展望」という年初に相応しい景気の良い内容になっている。当時のWSTS(世界半導体市場統計)による半導体市場予測(2018年は7.0%成長と予測)を引き合いに出し、「控えめだ、もっと伸びるはずだ」など、われながら元気な記事を書いたものだと思う。実際に2018年は16%前後の成長見込みなので、この点は正解だったわけだ。だが、2019年に関してはWSTSの半導体市場予測(2019年は2.6%成長と予測)に対して「そんなに伸びない、マイナス成長かもしれない」というのが筆者の見解である。
WSTSの予測は、1年前は2018年メモリ市場を9.3%成長と非常に保守的に予測し(実際には33%前後成長する見込み)、今回は2019年メモリ市場を−0.3%成長と予測しているが、同市場は2桁マイナスがほぼ確実、というのが筆者の予測なので、メモリ市況をどう見るかで全体の予測が大きく左右されることになる。メモリ市況の見方については、2018年11月公開の記事「メモリ市場予測、ボトムは2019年中盤か」で詳しく述べているので、ここでは詳細を省くが、2桁マイナス見込みのメモリ市場の穴を埋めるだけのプラス要因が見当たらないのが2019年半導体市場の見通しと言えよう。
メモリ市況が悪化するのは、メモリメーカー各社の設備投資競争の結果、需給バランスが崩れたことが原因であり、需要そのものは引き続き堅調に推移するものと思われる。メモリ以外の半導体市場見通しは、1桁台ながらもプラス成長が見込めそうなので、特に悲観するような状況ではないだろう。となると、気になるのはマクロ経済の動向である。
年明け早々の2019年1月2日、Appleが売上高見込みの下方修正を発表すると、米国でも日本でも株式市場で大幅な株安を記録した。両市場とも昨年12月から下落が続いており、2018年10月に2万4000円を超えた日経平均は12月26日に1万9000円を割り込んでいたが、このリバウンドに水を差すような結果となってしまった。
筆者は証券業界から引退して久しいが、同社の下方修正に対する日米株式市場の反応やメディアの報道は、いささか過剰ではないか、などと思ったりしている。年末に株安が起きていたのは、景気の見通しが懸念されたことが最大要因であり、スマホの売上拡大が期待できるような局面ではない。特にHuaweiを締め出そうとする各国の動きに対抗して中国ではiPhoneの不買運動などが繰り広げられるなど、同社業績の下振れはすでに想定されていてしかるべき状況にあったのだ。
特に騒ぎ立てるようなサプライズではないはずの下方修正に株式市場が反応するということは、このニュースが株価下落キッカケの口実として使われたという感が否めない。つまりそれだけ、マクロ経済の見通しには懸念材料が含まれている、何らかのマイナス要因が顕在化したら、株式市場としてはいちいちそれに反応して株価に反映させる必要がある、という流れが形成されているのだろう。これはマクロ経済の見通しが良くない時に見られる傾向の1つで、「新年早々好ましくない始まり方をしてくれたな」「何とかこの流れを払拭してくれるプラス要因が欲しいな」というのが筆者の偽らざる本音である。
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