エンジニアたちは現在、折りたたみ式スマートフォンや折り曲げ可能なディスプレイ、次世代DRAMなどの実現に向けて取り組む上で、大きな課題に直面している。しかしそこには、新しいクラスのヘルスケアデバイスや3Dチップスタックを提供することが可能な、数々のチャンスが広がっている。
「エンジニアたちは現在、折りたたみ式スマートフォンや折り曲げ可能なディスプレイ、次世代DRAMなどの実現に向けて取り組む上で、大きな課題に直面している。しかしそこには、新しいクラスのヘルスケアデバイスや3Dチップスタックを提供することが可能な、数々のチャンスが広がっている。」
上記は、半導体製造装置/材料の業界団体SEMIが米国カリフォルニア州で2019年1月6〜9日に開催した「Industry Strategy Symposium(ISS)」において、技術会議の中で取り上げられた目玉トピックの一部である。
ベルギーの研究機関imecでCSO(最高戦略責任者)を務めるJo de Boeck氏は、同社が手掛けるさまざまな半導体技術やアプリケーションについて説明し、今回のイベントのスタートを切った。その内容は、EUV(極端紫外線)リソグラフィ技術の進化から超電導量子ビットに至るまで、幅広い分野を網羅している。
中でも、衝撃的なアプリケーション分野の一つとして挙げられるのが、医学研究や薬物療法向けにヒト組織を再プログラムするための「lab-on-chip」だ。個別細胞を捕獲するためのマルチレベルアレイのチップで、マイクロ流体チャネルを介して化学物質を取り込むことができるという。
半導体製造装置の大手ベンダーApplied Materialsでディスプレイ技術担当ゼネラルマネジャーを務めるBrian Shieh氏は、「民生機器市場では、ディスプレイ分野に関して、折りたたみ式スマートフォンと折り曲げ可能な有機ELテレビの話題で持ちきりだ。しかし、近いうちに手頃な価格の製品が実現することはないだろう」と述べる。
同氏は、「Samsung Electronicsは2018年に、折りたたみ可能なスマートフォンの実現を約束していたが、このような製品の2019年現在の販売価格は、約1800米ドルである。しかも消費者たちは、製品の表面が安っぽく見える上に、傷が付きやすく割れやすいという点で、がっかりする可能性がある。研究者たちは、より柔軟性に優れた堅ろうな材料を探しているが、解決策はまだ見つかりそうにない」と述べている。
「一方、有機ELディスプレイ(OLED)の分野では、一般的なハイエンドテレビ向けに販売価格の上限を1000米ドルに設定可能なディスプレイを開発するには、今後5年間を要するとみられている」(Shieh氏)
有機ELテレビはコストが高いため、今後数年の間も引き続き、ニッチな高額製品のままとなるだろう。しかし、良いニュースとしては、有機ELディスプレイが現在、スマートフォン全体の約40%で採用されており、今後数年間で携帯機器市場における優位性を確保する見込みだという点がある。
Boeck氏は、「有機ELディスプレイが、テレビ用液晶ディスプレイ(LCD)と同等の価格競争力を持つためには、多大な労力を必要とするだろう」と述べ、初期段階の取り組みにおいて、インクジェットプリンタなどのさまざまな代替技術を使用したことについても触れた。
LCDと有機ELディスプレイの他にはマイクロLEDディスプレイがあるが、こちらは、さらなる低消費電力化と、寿命の延長、リフレッシュの高速化、より広範な色域などを、確実に実現することが可能だ。だが、マイクロLEDディスプレイのコストは、さらに高い。同ディスプレイの商用化は恐らくスマートフォンから始まるだろう。
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