激化の一途をたどる米中ハイテク戦争。実は、これは“法律バトル”でもある。本稿では、中国の「国家情報法」および米国の「国防権限法2019」を取り上げ、これら2つがどのようにハイテク戦争に関わっているかを解説する。
ここ1年間の米中ハイテク戦争の経緯を表1に示す。特に2018年後半からは、中国(とりわけHuawei)に対する米国の攻撃が激化している。主な事件を振り返ってみよう。
Huaweiの副会長兼CFO(最高財務責任者)である孟晩舟(Wanzhou Meng)氏が12月1日、米国の要請によりカナダのバンクーバーで逮捕された。孟氏の容疑はイラン向け違法輸出で、米国はカナダに孟氏の身柄の引き渡しを要求している(ただし孟氏は12月11日に保釈された)。
米司法省は先端技術を盗み出した疑いで12月20日に、中国人ハッカー集団「APT10」のメンバー2人を起訴した。一方、中国外務省は21日、「米国が事実を捏造し、言われ無き中国批判をしたことに断固反対する」との談話を発表している(日経新聞12月21日)。
米Wall Street Journalは1月16日、米政府が、Huaweiを米企業の企業秘密を盗んだ疑いで本格捜査していると報じた。近日中に起訴する可能性もあるという(日経新聞2019年1月17日)。
なぜ、米国は、これほど中国、特にHuaweiを攻撃するのだろうか。また、米国は「中国が知財を盗んでいる」と主張しているが、それは本当なのだろうか。
本稿では、米国が中国を恐れている理由が、Huaweiなど中国企業が次世代通信5Gのインフラのデファクト・スタンダードを握りつつあることおよび、中国が2017年6月28日に成立させた「国家情報法」という法律の存在にあることを論じる。
これに対して米国は、トランプ大統領が2018年8月13日に著名して成立させた「国防権限法(NDAA2019注1))」により、中国Huaweiなどの通信機器を世界中から排除しようとしていることを述べる。要するに、米中ハイテク戦争の背後には、法律バトルが存在するのである。その上で、米国の「国防権限法2019」は、日本企業にも大きな影響を与えることを警告する。
注1)NDAA2019は、“NATIONAL DEFENSE AUTHORIZATION ACT FOR FISCAL YEAR 2019”の略称である。
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