米政府が、EDAツールの中国販売の規制を強化する。これまでは最先端半導体の設計に必要なツールだけが対象だったが、それ以外にも規制対象を広げる。主要EDAベンダーにとって中国市場での売上高は無視できないほど大きいだけに、業績へのマイナス影響は避けられないとみられる。
米国商務省は、米国および欧州の主要なEDAベンダーに対し、輸出許可を取得せずに中国へ販売することを停止するよう指示したと報じられている。この動きは、特に先進半導体の開発における中国の技術的進歩を妨害しようとする米国政府の取り組みが大きくエスカレートしていることを示している。
EDAソフトウェアは、世界の半導体サプライチェーンにおける重要なコンポーネントであり、設計者や製造業者はEDAソフトウェアによって、スマートフォンからAIシステムまで、あらゆるものを動かす複雑なICの開発やテストに欠かせない。
今回の指令は、これまでの規制を拡大するものとみられ、米国に拠点を置くCadence Design Systems(以下、Cadence)やSynopsys、Siemens EDAなどの大手EDAベンダーに対し、個別の審査を受けた上で、中国への全ての販売についてライセンスを取得することを義務付けている。
これは、GAA(Gate-All-Around)-FETや14nm世代以降のプロセスノードなど、最先端のチップアーキテクチャ向けのソフトウェアを主な対象としていたこれまでの規制からの転換となる。
中国市場は、国際な主要EDA企業にとって大きな収益源となっている。Synopsys の2024会計年度の中国での売上高は約10億米ドルで、同社の総売上高の約16%を占めたという。Synopsysは、2025会計年度通期の中国売上高は前年比で減少すると予測している。
Cadenceの中国からの収益は、2024会計年度に5億5000万米ドルに達し、同社総収益の12%を占めた。Siemens Digital Industries Software傘下のSiemens EDAも、中国市場で大きなシェアを占めている。Synopsys、Cadence、Siemens EDAを合わせると、中国のEDA市場の約80%を占めている。
新たな規制は、これらの企業と、その高度なソフトウェアに大きく依存している中国の顧客の収益に打撃を与えると予想される。
Cadenceの中国からの収益は、2023年から2024年にかけて1億米ドル以上減少した。同社は、世界的な貿易規制に関連する不確実性を理由に、2025年度の中国事業の成長は横ばいになると想定している。
Siemens Digital Industries Softwareは、2025年第2四半期のEDA事業の収益は前年比で「大幅に減少した」と報告した。2025年5月下旬に新指令に関する最初の報道があった後、Synopsysの株価は9.6%、Cadenceの株価は10.7%下落した。Siemensは最近、デジタル設計および検証ワークフローで使用されるタイミング制約ツールの開発を手掛ける米Excelliconを買収したと発表している。
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