今回は、DRAMやNANDフラッシュメモリなど既存のメモリと、MRAM(磁気抵抗メモリ)やReRAM(抵抗変化メモリ)といったエマージング・メモリ(次世代メモリ)の特徴を比較する。
2018年8月に米国シリコンバレーで開催された、フラッシュメモリとその応用製品に関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」で半導体市場調査会社Objective AnalysisでアナリストをつとめるJim Handy氏が、「Flash Market Update、2018」のタイトルで講演した半導体メモリ市場に関する分析を、シリーズでご紹介している。
なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
Handy氏の講演は大別すると、NANDフラッシュメモリ業界に関する前半部分と、エマージング・メモリ(次世代メモリ)に関する後半部分に分けられる。NANDフラッシュメモリの大手ベンダーの半分はDRAMの大手ベンダーでもあるので、前半ではDRAM業界についても少しふれている。
前回は、NANDフラッシュメモリとDRAMの市場成長と価格変動に関する講演を抜粋した。講演の前半部分に関する締めくくりの回でもある。今回からは、講演の後半部分を扱う。始めは既存の半導体メモリとエマージング・メモリ(次世代メモリ)の性能比較である。
既存の半導体メモリとしてHandy氏は、SRAM、DRAM、ROM(マスクROM)、EEPROM、NORフラッシュメモリ、NANDフラッシュメモリを挙げ、その性能を一覧表にまとめてみせた。
既存の半導体メモリは大別すると、電源を切るとデータが消える揮発性メモリ(ボラタイルメモリ)と、電源を切ってもデータが残る不揮発性メモリ(ノンボラタイルメモリ)に分けられる。揮発性メモリ(ボラタイルメモリ)に分類されるのは、SRAMとDRAMである。
SRAMはデータの読み書きが極めて速い品種や消費電力が非常に低い品種などがあり、記憶容量は少ないものの、ニッチな市場を形成している。問題はDRAMに比べると記憶容量当たりの価格が高いことだ。DRAMは良く知られているように、大きな市場規模を有する主流の半導体メモリである。データの読み書きが高速で、記憶容量当たりの価格が低い。ただし待機時の消費電力は低くない。また主流のDDRタイプはページ単位のアクセスを前提としており、バイト単位の細かなアクセスが難しい。
一方、不揮発性メモリ(ノンボラタイルメモリ)に分類されるのは、ROM(マスクROM)とEEPROM、NORフラッシュメモリ、NANDフラッシュメモリである。ROM(マスクROM)はシリコンダイの製造工程でデータを書き込むメモリで、データの読み出しだけができる。データの書き換えはできない。EEPROMはデータをバイト単位で書き換え可能なメモリである。読み出しはそこそこ速いものの、書き込みは遅い。また記憶容量当たりの価格が高い。NORフラッシュメモリも、読み出しはそこそこ速いものの、書き込みは遅い。記憶容量当たりのコストは、EEPROMよりも低い。
そして不揮発性メモリで最大市場を形成するNANDフラッシュメモリは、記憶容量当たりの価格があらゆる半導体メモリの中で、最も低い。ただし読み出しは遅く、書き込みはさらに遅い。そして扱えるデータの単位が大きい。読み出しはページ単位である。書き込みは消去動作を前提とするので、実質的にはさらに大きなブロック単位となる。
まとめると、揮発性メモリ(ボラタイルメモリ)は性能で優れているものの、SRAMは記憶容量当たりの価格が高く、DRAMは消費電力があまり低くない。また電源が切れるとデータが消えてしまうという基本的な弱点がある。また不揮発性メモリ(ノンボラタイルメモリ)は、読み出しはそこそこ速い品種があるもの、共通して書き込みが遅い。またバイト単位でデータを扱えるメモリは、価格が高くつく。
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