ハイテク技術のスクープ記事を担当する記者としてHuaweiをレポートすることは、同社に対するバッシングが激しさを増している昨今は特に、難しい仕事だ。しかし幸運にも、深センにあるHuawei本社を訪ねる機会を得た。
ハイテク技術のスクープ記事を担当する記者としてHuaweiをレポートすることは、同社に対するバッシングが激しさを増している昨今は特に、難しい仕事だ。
筆者はHuaweiについてよく知らない。社名の読み方にも悩んだくらいだ。しかし幸運にも、深センにあるHuawei本社を訪ねる機会を得た。HuaweiのコンシューマービジネスグループのリーダーであるShao Yang氏同席の下、2人のエグゼクティブに対しそれぞれインタビューを行った。
さらに、Huaweiをモデルにする深センの新興企業数社のエンジニアと対談する機会にも恵まれた。その中には、問題を解決するためならば、簡易寝袋を使ってオフィスに泊まり込むのもいとわないと言うエンジニアもいた。それが「Huawei流」なのだ。
Huaweiについて何から何まで知っている記者と比べれば、中国での筆者の経験はごく限られたものにすぎない。だが、Huaweiが(少なくとも中国では)どのような企業であるかを垣間見ることはできたと思う。筆者は、2013年に投稿した『Huawei, World’s Biggest Underdog(Huawei、世界最大のチャレンジャー)』というタイトルの記事の中で次のように書いた。
「Huaweiは、中国の地方都市のコモディティPBX(構内電話交換機)機器の小売業者として1987年に設立され、世界的な通信機器企業に成長した。Huaweiの成功は、中国のビジネス界で愛国心と嫉妬が入り交じった形で語られている。」
多くの中国人にとって、“あらゆる困難を跳ね返して”成長するHuaweiは、(毛沢東以降の)近代中国、そして彼ら自身のサクセスストーリーでもある。Huaweiのエンジニアは、ライバル企業からは「狼集団」といわれることもあるが、世界がHuaweiについて間違った認識を持っていることを(たとえ世界中が反論しようとも)証明しようとしている。彼らはその粘り強さで成長してきた。Huaweiの従業員は、「あらゆる困難を跳ね返す」という同社の伝統と「チャレンジャー」精神で、逆境をバネに努力を重ねてきた。
欧米諸国でのHuaweiに対する否定的で、侮辱的でさえもある報道に対し、たくさんの中国人が憤慨している。中国人であれば、自国の英雄を擁護するのは当然のことだ。
報道内容を批判したりどちらか一方を支持したりする前に、私たちがHuaweiの何を理解していないのかを考え、西側のメディアがHuaweiに対する攻撃を緩めない理由を明らかにしたいと思う。
まず、西側のメディアはHuaweiの最高経営幹部と話す機会がほとんどない。さらに重要なのは、Huaweiは株式公開会社ではないことだ。
Huaweiは、大規模なメディア広報を頻繁に行っている。直近では2019年1月上旬に深センで大規模な記者会見を開き、「世界のコンピューティング能力を次世代レベルに引き上げる業界最高性能」とうたうArmコアベースのCPUを発表した。
大規模な会見では当然ながら、Huaweiの経営陣と懇意になる機会はほとんどない。
第2に、Huaweiにかけられている疑惑や容疑は多種多様だ。Huaweiの従業員によるIP(Intellectual Property)の盗用から、創設者と人民解放軍のつながり、Huaweiのネットワーク機器に極秘で設置されたとされるバックドア、米国の制裁に反したイランとのビジネス関係まで多岐にわたる。
これらは重大な問題だが、個別の事象である。これらの問題について一つ一つ議論するには、多くの労力を要する。Huaweiの見解をほとんど得られない状況ではなおさらだ。メディアにとっては、全ての疑惑をまとめて一つの大きな「Huaweiの脅威」として扱うほうが簡単だ。
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