AppleとQualcommの間で繰り広げられている法廷闘争は、ついに人的リソースにまで被害が及びつつあるようだ。Appleは現在、Qualcommの本拠地である米国カリフォルニア州サンディエゴでセルラーベースバンドのエンジニアの求人を募集している。
AppleとQualcommの間で繰り広げられている法廷闘争は、ついに人的リソースにまで被害が及びつつあるようだ。Appleは現在、Qualcommの本拠地である米国カリフォルニア州サンディエゴでセルラーベースバンドのエンジニアの求人を募集している。
Googleでざっと検索してみたところ、Appleによる求人が24件以上ヒットした。その多くは30日以内に投稿されたものであり、セルラーモデムやアプリケーションプロセッサの設計に携わる職ばかりである。
求人の一つにセルラーモデムシステムの設計者があり、「無線通信規格(5G-NR、LTE、UMTS、IEEE 802.11ax/802.11adを含むがこれらに限定されるものではない)と、物理レイヤーアルゴリズムおよび手順と同規格の関わりに精通していること」という条件が付けられている。
他のスマートフォンメーカーと同様に、Appleにはあらゆるセルラー規格の専門知識を備えた精鋭がそろっていて、シリコンを選択する立場にある。だが最近の求人では、実際にチップを設計するエンジニアが求められているようだ。
求人情報からは、Appleが独自のアプリケーションプロセッサ「Aシリーズ」の設計から、統合型セルラーモデムを備えたものへと、次のステップに移ろうとしていることが伺える。統合型セルラーモデムは、Appleのほとんどの競合先が用いているコンポーネントである。
他の求人の例としては、物理検証に携わるエンジニアなどがある。
サンディエゴに拠点を置くMoor Insights and StrategiesのアナリストであるAnshel Sag氏は、2019年2月初旬に地元の技術掲載で見つけた広告に気付き、ツイートを発信した。
Sag氏は「Appleは500人のスタッフが働く拠点をサンディエゴに置こうとしている。さらに、サンディエゴ市長は、Appleの拠点は1000人規模になる可能性があると発言している。企業は計画を公にしたいからこそ求人を募集する。Appleは不満を抱いているエンジニアを取り込むことを狙っているのだろう」とツイートした。
サンディエゴを、セルラーエンジニアが集まる都市にしたのはQualcommだ。ベースバンドチップで競合関係にあるIntel、Huawei、MediaTekも、サンディエゴに大規模な拠点を有している。QualcommはNXP Semiconductorsの買収を諦めた後、人員削減によって10億米ドルのコストカットを行った。この人員削減の影響を受けたのは、主に新たに設立されたサーバSoC部門だった。
Appleが自社のモデム部門に人材を集めようとしている動きは、Apple/Qualcomm間の長い係争における最も新しい局面だといえる。2005年、Appleがひそかに「iPhone」を開発していた当時、AppleはQualcommにセルラーモデムのサンプルを提供するよう依頼した。Appleの調達部門のあるマネジャーによると、チップの代わりにAppleが受け取ったのは、「まず、特許ライセンスにサインするように」という厳しい警告だったという。
Appleはこれに腹を立て、初代iPhoneと、その後継機種にはInfineon Technologies製のモデムが採用された。だがその数年後、Appleは3G(第3世代移動通信)対応のiPhone向けにQualcommのモデムを採用することになる。CDMAをサポートするチップが必要だったからだ。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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