さて、今回の本題に入ろう。中国製スマートフォンは長らく、近傍通信(Wi-FiやBluetooth)に欧米のチップを使い続けてきた。Broadcom、Qualcomm、Nordic SemiconductorやCypress Semiconductorなどの実績が大きい。しかし、2017年くらいから徐々に中国メーカーのチップセットの中に、Wi-Fi、Bluetooth通信機能を持った自前のチップが組み込まれている。
図1は、2018年に発売になった中国LEAGOOのスマートフォン「T5C」を分解した様子である。内部には、中国Tsinghua UnigroupのSpreadtrum Communication(以下、Spreadtrum)の14nmプロセッサ、電源IC、トランシーバーセットに加えて、Wi-Fi、Bluetooth通信のチップも含まれている。メインのプロセッサは広域データ通信のLTEや2G/3Gを行うモデムを持っている。
中国メーカーではHuawei傘下の半導体メーカーであるHiSiliconや、ZTE、Unigroup傘下のRDAやSpreadtrum、LeadCoreがLTEモデム機能を持つプロセッサを数多くリリース。スマートフォンや各種応用製品に採用される実績を持っている。
LTEモデムに加えて、Wi-Fi、Bluetoothチップをラインアップにそろえたことは大きな進展であった。こうしたチップはスマートフォンのみならず、多くのIoTエッジ機器に使用できるからだ。
図2はSpreadtrumのWi-Fi、Bluetoothコンビネーションチップ「SC23428」の開封の様子である。多くのメーカーは現在1シリコン化したコンビネーションチップを提供しているが、2つの機能を1シリコン化すると、その分チップ面積が大きくなってしまう。
ユーザーはWi-Fiだけ、Bluetoothだけを使いたいケースもある。両者を使いたい場合は図2のチップを使えばよいが、Spreradtrumは、おのおのを個別にパッケージ化したチップもそろえている。
いずれにしてもWi-Fi、Bluetoothチップを、自社製にすることで、チップセットの完成度は高まり、かつ多くの市場分野にアプローチできるようになる。
ちなみに本パッケージの中身であるが、図2は一部省略しており、Wi-Fi用、Bluetooth用の2つのシリコン以外にも、通信に必要なアンテナスイッチなどの部品も内蔵されており、モジュール化されたものになっている。この辺りの作り込みも先行した欧米メーカーと同等の構造だ。
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