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正体不明の異物はあるのか? 最新サーバの搭載チップ事情この10年で起こったこと、次の10年で起こること(34)(3/3 ページ)

» 2019年04月17日 11時30分 公開
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チップの地域・機能比率を分析

 図4は、全44チップの分布をまとめたものである。プロセッサとメモリを除いており、プロセッサとメモリを入れると比率は変わる(プロセッサは米国製がほとんど。メモリは韓国製または米国製だ)

図4:Supermicro Serverチップ分布 (クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 図4の左側は、搭載チップメーカーの本拠地をグラフで示したが、圧倒的多数を占める米国のTIだけは、単独で表した。グラフの通り、約7割がTI製だ。それ以外にも米国メーカーのチップが多数使われる。米国メーカーチップが4分の3を占めているのである。残りは台湾メーカーのPC向けチップがサーバにも活用される。それ以外ではドイツメーカー、オランダメーカーなどが続く。本グラフは機能チップだけであり、受動素子(コンデンサーなど)を含めると日本製も使用される。

 サーバと言えばプロセッサとメモリ、と思いがちだが、実際にはメインボード上には多くのアナログチップ、アナログとデジタルと混載したミックスドシグナルチップが多くを占めている。搭載チップの4分の3はアナログチップだ。さらにクロック系、センサー(温度や電圧、電流を検知する)、ドライバIC、パワー半導体などが並ぶ。

 デジタルプロセッサは日々、プロセスの微細化に向かい、コア数を増やして動作周波数を上げ、能力を高めている。またメモリも同様に先端プロセスを用い、記憶密度を上げ、動作周波数を上げ、転送ビット幅を広げている。ここには競争があるが、アナログもそれらプロセッサ、メモリの機能、性能を引き出すために日々使用が広がっている。

 さて、今回、分析結果を紹介した以上のケースでは、中国製チップの搭載数はゼロであった!!

 現在、弊社ではスーパーコンピュータ(=コンピューターの性能ランキング「TOP500」の上位にランクインしているサーバーの1つ)のラックも1台分解し、解析しているところ。詳細はここには記さないが、大きな特長はアナログチップ(電源系やタイミング系)が数多く使われていることだ。

 デジタルの使用が広がれば広がるほど、アナログの使用も増えるといえそうだ(本当は細かく説明したいところだが今回は割愛する)

 スマートフォンも同様だ。メインのプロセッサはデジタルだが取り囲むように電源IC、オーディオチップとトランシーバー、センサー、パワーとデジタル以外のチップ搭載が増えている。デジタルは1つ、アナログは複数。パワーとセンサーはさらに搭載数が多い。

実機ベースで事実確認を継続

 いよいよ第5世代移動通信(5G)対応端末が市場に出回り始めた。当社では早速、海外から複数の5G対応端末を入手した。今夏に向けて続々と5G対応端末を分解していく予定だ。その際に機能分布やメーカー国籍別分布、デバイスカテゴリーなどに注目していく。スマートフォンもサーバも、クルマも……、チップを搭載するあらゆるもので競争軸と協調軸がどこにあるかを明確にしていくべく、実機ベースでの事実確認に注力したい。

 SupermicroやHuaweiなどの機器に、いかにもハードウェアの異物が入っているような情報が流れて、その情報に対し否定も肯定もなされないまま月日が流れている。

 異物、すなわち正体不明のチップに出会いたいという気持ちもありながらわれわれは日々、分解とチップ開封による事実確認を続けている。もしも異物らしきものを確認された方がいれば、ぜひ知らせてほしい。

筆者Profile

清水洋治(しみず ひろはる)/技術コンサルタント

 ルネサス エレクトロニクスや米国のスタートアップなど半導体メーカーにて2015年まで30年間にわたって半導体開発やマーケット活動に従事した。さまざまな応用の中で求められる半導体について、豊富な知見と経験を持っている。現在は、半導体、基板および、それらを搭載する電気製品、工業製品、装置類などの調査・解析、修復・再生などを手掛けるテカナリエの代表取締役兼上席アナリスト。テカナリエは設計コンサルタントや人材育成なども行っている。


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