EETJ カメラの多眼化における課題は何でしょうか。
李氏 一つは、やはりコストだ。例えばソニーは2018年7月に、4800万画素のCMOSイメージセンサーを商品化すると発表したが、こういった超ハイエンドのイメージセンサーが複数載ってくると、スマートフォンのハードウェアの価格は相当高くなる。デバイスに対する基本的な要求というのは、以前も今も、“より低い価格、より高い耐久性、より小型”という3つなので、スマートフォンの多眼化は、少なくともコスト面については、市場の要求と真逆を行くことになる。
さらに、搭載するカメラが増えれば、メモリやプロセッサの負担が増えることになる。加えて、カメラを使えば使うほど、もちろんバッテリーも減る。このため、システムとしてより高い耐久性を求められるようになるだろう。耐久性では、カメラ周辺には、ボイスコイルなどの機構部品もまだ多いので、そこも懸念点の一つだ。
EETJ CMOSイメージセンサーではソニーが強いですが、中国などのセンサーメーカーの動向は、どうなっているのでしょうか。
李氏 中国のセンサーハブメーカーとしては、主に4社あるかと思う。まずはHLMCとXMCだ。これらは、立ち上げは速かったが、うまくいっていないという話を聞いている。その他としては、中国の大手半導体ファウンドリーであるSMIC(Semiconductor Manufacturing International Corporation)が買収したイタリアの半導体ファウンドリーLFoundryが手掛けている(2019年3月に売却を発表)。4つ目が、立ち上げ当初より13Mピクセル(スマートフォン向け)の製品を発表して注目を集めるHIDM(Huaian Imaging Device Manufacturer)だ。
中国の政府も、イメージセンサーやカメラの重要性を認識しているのだろう。大量の監視カメラが必要になる中、貿易摩擦の影響などでセンサーやカメラを購入できなくなる可能性も踏まえているのかもしれない。そうなると、中国政府としては、「自国にとって重要なデバイス、機器は、自国で製造したい」と考えるのが妥当だろう。そのために、中国政府はイメージセンサー分野に相当額の投資をしているのではないか。
こうした中国メーカーが、低価格のイメージセンサーをばらまくように市場に投入し、驚異的な存在になる可能性も否めない。ただ、そのころになると、恐らくソニーなども、ハイエンドに移行し、数メガピクセルなどのCMOSイメージセンサーは製造しなくなるのではないか。
ハイエンドCMOSイメージセンサーへの移行は、市場にマイナスの影響を与えている。昨冬にはSamsungが、需要が高い5MピクセルクラスのCMOSイメージセンサーを値上げしているという話もあり、市場がアンバランスになってきていると感じる。
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