IHSマークイットジャパンのアナリストが、エレクトロニクス業界の2019年を予測するシリーズの第4回。最終回となる今回は、イメージセンサー/カメラについて予測する。
IHSマークイットジャパンのアナリストが、エレクトロニクス業界の2019年を予測するシリーズの第4回は、スマートフォンやマシンビジョンなどで使われているイメージセンサー/カメラに焦点を当てる。同社の主席アナリストで、同分野を担当する李根秀氏に話を聞いた。
EE Times Japan編集部(以下、EETJ) イメージセンサー/カメラ市場の全体について、2018年の振り返りと2019年の見通しを教えてください。
李根秀氏 カメラの出荷台数が増えてくるという見通しが出てきた。2019年には、カメラの年間出荷台数は約30億個に迫る勢いだが、将来は40億、50億と増えていき、いずれは世界人口(約75億人)に近づくと考えている。金額ベースでも1兆円を超えており、このまま伸び続ければ、出荷量は、単独のデバイスとしてはメモリに匹敵する規模にまで達するのではないか。
DRAMやフラッシュメモリなどのメモリは昔から、各市場調査が専門のアナリストや分析チームを用意するほど、業界に影響を与える存在だ。カメラが、そのメモリに近い立ち位置まで来るというのは驚くべきことだろう。それにもかかわらず、カメラ市場を専門に見るアナリストは非常に少ないというのが現状だ。
現在、カメラのアプリケーションで最も規模が大きいのはスマートフォンだ。2018年は、同市場が過当競争に入り、特に中国のカメラメーカーが対応し始めると、レッドオーシャンになりかねない、ということを予測した。
2018年を振り返ってみると、その一端が表れ始めている。「iPhone」の販売不振による、いわゆる“アップル・ショック”からも分かるように、スマートフォン市場が不安定になり始めた。そして、それを裏付けるように、Huaweiをはじめとする中国メーカーのスマートフォンのシェアが上がってきた。
スマートフォン市場は飽和状態に近づいており、出荷台数の総数としては伸びにくくなっていることに加え、プレイヤーや勢力図が変わるのではないかという不安定な状況という背景があり、これまで強固だった市場の基盤が崩れている、もしくは動いているのではないかと感じている。こうした状態は2019年も続くのではないか。
EETJ スマートフォン向けカメラについての動向は、いかがでしょうか。
李氏 スマートフォンではメインカメラの多眼化、つまり搭載されるカメラの増加が挙げられる。2018年半ばからそうした傾向がじわじわと出始め、ここにきて決定的になっている。各スマートフォンメーカーについて調べてみると、2018年半ばのデータでは、Huaweiは出荷しているスマートフォンのうち70%が2眼以上となっている。これは、かなり高い割合だ。しかもHuaweiは、3眼カメラを搭載したスマートフォンも既に出荷している。Appleは約40%が、多眼スマートフォンだ。
全体としてみても、2018年第2四半期の実績で約32%が多眼スマートフォンになっている。
今後も、2眼以上のカメラがスマートフォンに搭載されるというトレンドは崩れないのではないか。2018年は、強い勢いで多眼化が進んだ年だった。遅れ気味だったメーカーも次々と多眼スマートフォンを発売し始めている。例えばSamsung Electronics(以下、Samsung)のフラグシップモデル「Galaxy S9」は、カメラを4つ搭載した、4眼スマートフォンとなっている。
Apple、Samsung、Huawei、Xiaomiといった、世界のスマートフォンのトレンドを作っているプレイヤーたちが多眼化に取り組んでいる。各社にとって多眼化は、ユーザーを取り込むための最重要ポイントなのは間違いないだろう。
やや手堅く見積もったとしても、2019年の年央で、出荷されるスマートフォンのうち約50%は2眼以上のスマートフォンとなるのではないかと予測している。
カメラの出荷個数を考えると、1眼スマートフォン向けとして年間約15億個が安定して出荷されている状態だ。多眼化に伴い、2019年の出荷個数は、2018年比で1.5倍になると見込んでいる。
EETJ スマートフォン向けカメラのサプライヤーにとっても大きなビジネス機会となりそうです。
李氏 その筆頭がソニーだろう。ソニーは、2018年〜2020年度の中期経営計画として、CMOSイメージセンサーに3年間で約1兆円の設備投資を行うと発表した。
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