「結晶」でありながら、蒸気にさらしたり、こすったりといった極めて弱いマクロな刺激によって、発光や変色、変形など目に見える変化を見せる――。そんな、これまでの常識を覆すような新しい物質群「ソフトクリスタル」の研究が進められている。研究者らは、2019年4月、東京都内で公開シンポジウムを開催し、最新の研究内容を紹介した。
「結晶」でありながら、蒸気にさらしたり、こすったりといった極めて弱いマクロな刺激によって、発光や変色、変形など、目に見える変化を見せる――。そんな、これまでの常識を覆すような新しい物質群「ソフトクリスタル」の研究が、新学術領域研究として進められている。研究を行っている北海道大学大学院理学研究院教授の加藤昌子氏をはじめとする研究者らは、2019年4月、東京都内で公開シンポジウムを開催し、最新の研究内容を紹介した。研究者らは学理、設計原理の解明を進めるとともに、不揮発性メモリや超高解像度のモニターなど、さまざまなデバイスへの活用の可能性についても研究を行っている。
ソフトクリスタルとは、「結晶性を保ちつつマクロで弱い刺激によってミクロな構造が室温付近で容易に変化する」「ミクロな構造の変化が発光現象や光学特性などの目に見える物性として捉えられる」という2つの特徴を持つ物質群だ。規則正しい結晶構造と周期構造を持つ安定な構造体が、その結晶性を保ちながらも、容易に構造変換や相転移を起こす、「これまでにない極めて新しい物質だ」(加藤氏)という。
2002年に加藤氏が世界に先駆けて発見した、アルコール蒸気やクロロホルム蒸気にさらすことで発光する「発光性ベイポクロミズム現象」が起こる白金複核錯体をはじめ、近年、日本の研究者を中心に相次いで発見されていたという。だが、これまでは偶然やスクリーニングに頼る形で発見例を増やしていた。
そこで、その学理の解明や未踏材料の設計原理の解明、さらにはデバイス、工学的研究を加えたイノベーションの創出を目指して、2017年から新学術領域研究「ソフトクリスタル」としてスタートした。
蒸気にさらすと発光する結晶や、こすると発光色が変わる結晶、押すと変形するが離せば元に戻る弾力性を持った結晶、冷やすと”ジャンプ”する結晶など、さまざまな性質を持つソフトクリスタルの研究が進められている。
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