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LEDフリッカーの抑制とHDRを両立した車載用ISPオムニビジョンが発表(1/2 ページ)

CMOSイメージセンサーを手掛ける米OmniVision Technologies(以下、オムニビジョン)は2019年5月13日(米国時間)、車載用の映像処理プロセッサ(ISP:Image Signal Processor)の新製品「OAX4010」を発表した。HDR(High Dynamic Range)とLEDフリッカー抑制機能を両立するアルゴリズムを実装したもの。

» 2019年05月15日 15時00分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

 CMOSイメージセンサーを手掛ける米OmniVision Technologies(以下、オムニビジョン)は2019年5月13日(米国時間)、車載用の映像処理プロセッサ(ISP:Image Signal Processor)の新製品「OAX4010」を発表した。HDR(High Dynamic Range)とLEDフリッカー抑制機能を両立する独自アルゴリズムを実装したISPである。オムニビジョンの日本支社は、この発表に合わせて同年5月14日に記者説明会を開催した。

車載モニタリングシステムで問題となるLEDフリッカー

 自動車のヘッドライトやテールライト、信号などでLEDの採用が進む中、ADAS(先進運転支援システム)やDMS(Driver Monitoring System)といった車載カメラを多用するシステムでは、LEDの発光とイメージセンサーのシャッタータイミングのずれによって発生するLEDフリッカーが課題となっている。緊急車両の点滅なのかLEDフリッカーなのかが判断できなかったり、交通標識を誤認したりといった、生命に関わる事故につながりかねない危険性があるからだ。

 オムニビジョンは、このLEDフリッカーを抑える独自の技術「split pixel」を同社のイメージセンサー「OX01A10」「OX02A10」に適用している。同じ画素の中に大きなピクセルのPD(フォトダイオード)と小さなピクセルのPDを収め、小さなピクセルのPDの開口率を低くすることで(つまり感度を抑えることで)、光量が飽和するまでの時間を長くする技術だ。これによって、露光時間内にLEDが1回以上発光するように露光時間を長くできる(露光時間内にLEDが発光すれば、LEDフリッカーを抑えられる)。

「split pixel」の概念。同じピクセル内に、RGBごとに大きなPD(図中の大きな四角)と小さなPD(小さな四角)がある 出典:オムニビジョン
オムニビジョン日本支社のKelvin Chang氏

 だが、露光時間を長くすると、LEDフリッカーは抑えられる一方で、映像が白飛びし、HDRを実現するのは難しくなるというデメリットが発生する。つまり、LEDフリッカー低減とHDRはトレードオフの関係にある。今回発表したOAX4010に搭載されているアルゴリズム「HALE(HDR And LFM*) Engine、ハレと発音)」は、LEDフリッカーの低減とHDRを両立させるための技術だ。

*)LFM:LED Flicker Mitigation

 OAX4010は、基本的にはイメージセンサーOX01A10/OX02A10と組み合わせて使う。HALEは、露光時間の長さを「long」「short」「very short」の3種類に分け、それぞれの露光時間で捕捉した3枚の画像を合成するアルゴリズムである。

 まず、大きなPDで、「long」の露光時間で1枚目の画像を捕捉。次に小さなPDで、「short」の露光時間で2枚目の画像を捕捉する。そして再び大きなPDで、3枚目の画像を「very short」の露光時間で高速に捕捉する。HALEは、これら3枚の画像を合成し、「LEDフリッカーがなくHDRが120dB」という1枚の画像にするのである。オムニビジョンの日本支社で車載製品担当 シニアマーケティングマネジャーを務めるKelvin Chang氏は「HALEがなければ、LFMの機能をオンにするとHDRは100〜110dBに落ちてしまう」と説明する。

「HALE」の概要。3種類の露光時間で捕捉した3枚の画像を合成するアルゴリズムだ 出典:オムニビジョン(クリックで拡大)

 OAX4010は、AEC-Q100 Grade 2とAutomotive SPICE(A SPICE) CL2の車載安全機能に準拠している。60fps(フレーム/秒)のカメラ1台、または30fpsのカメラ2台をサポートできるので、「サラウンドビューシステムで使うISPの数を減らすことができ、システムコストの削減につながる」(Chang氏)という。

 OAX4010は、HALEを搭載した最初の製品で、既にサンプル出荷を開始しており、量産は2020年から開始する。主に、カメラモニタリングシステムなどを開発するティア1メーカーを対象としている。なお、オムニビジョンはOAX4010の他、HALEを搭載した新製品を2019年に複数リリースする予定だ。

 記者説明会では、OAX4010のデモを行った。

LEDライトと卓上ライトの画像を、「OAX4010」を搭載したカメラシステムおよび非搭載のカメラシステムで撮影した。OAX4010非搭載のシステムで撮影した画像(左のディスプレイ)では、LEDフリッカーはないが、卓上ライトは白飛びしてしまっている。OAX4010を搭載している方(右のディスプレイ)では、LEDフリッカーもなく、卓上ライトが点灯している様子もはっきり分かる(クリックで拡大)
左=デモの構成。横に並んだ手間の基板は、「OAX4010」を搭載したカメラシステム(右の基板)と非搭載のシステム。全面に取り付けたカメラで、LEDと外の景色を撮影している。2Mピクセルのイメージセンサー「OX02A10」を使っている。記者説明会の日は曇り空だったので、卓上ライトをつけてダイナミックレンジが高い状態を意図的に作り出した。なお、LEDの周波数は90Hzでデューティ比は10%(1.1ミリ秒光、10ミリ秒は消えている)/右=赤枠内がOAX4010(クリックで拡大)
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