DRAMの“シリコンサイクル”は、次のように説明できる。例えば、1995年にWindows95が発売され、2000年にITバブルが起き、2016〜2017年にビッグデータの普及に伴ってサーバ需要が急拡大した。このようなとき、DRAMの需要が供給量を上回るため、DRAM価格が高騰する。その結果、DRAMの出荷額が増大し、好況期を迎える。
この時期に、メモリメーカーはDRAMを増産するが、供給量が需要を上回ると価格が下落する。2016〜2017年は、メモリメーカーがDRAMを大増産したわけではないが、プロセッサの供給不足により、DRAMが過剰となり価格暴落を引き起した。
つまり、その時々で事情は異なるが、供給が需要を上回ると価格が下落し、メモリ不況に突入する。DRAM市場には、このような“シリコンサイクル”が存在する。
図3にDRAMの出荷額と出荷個数の年次推移を示す。DRAMは、出荷個数の挙動から、以下の三つの時期に分けることができる。
1)1991年〜2003年:緩やかに出荷個数が増大する時期
2)2003年〜2010年:急激に出荷個数が増大する時期
3)2010年以降:出荷個数が年間150億個でほぼ一定の時期
2003年ごろを境に、DRAMの出荷個数の成長率が大きくなる。この原因は、21世紀に入って、中国を筆頭とするアジア諸国が経済発展を遂げはじめたことに起因すると考えられる。つまり、中国などのアジア市場が、旺盛にPC、携帯電話、デジタル家電などを購入するようになり、それに使われるDRAM市場も急拡大したと推定できる。そのことは、2001年以降、アジアの半導体市場が急拡大していることからもうかがえる(図4)。
2010年以降は、DRAM出荷個数が約150億個で横ばいとなる。これは、多数存在したDRAMメーカーが集約されたことに起因している。特に、2012年にエルピーダメモリが倒産して米Micron Technologyに買収されてからは、DRAMメーカーは実質的にSamsung Electronics、SK Hynix、Micronの3社になった。その結果、これら3社が“暗黙の談合”を行って生産調整したため、DRAM出荷個数がほぼ一定となったのだろう。
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