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貿易摩擦で中国半導体業界の底力が上がる? 座談会【後編】IHSアナリストが読む米中貿易戦争(1/3 ページ)

IHSマークイットジャパンのアナリスト5人が、米中貿易戦争がエレクトロニクス/半導体業界にもたらす影響について話し合う緊急座談会。後編では、メモリとHuaweiをテーマに、中国の半導体業界の今後について予想する。

» 2019年06月27日 11時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

 前編「5GはHuawei抜きで何とかするしかない」に続き、IHSマークイットジャパンのアナリスト5人が、米中貿易戦争がエレクトロニクス/半導体業界にもたらす影響を話し合う緊急座談会の後編をお届けする。

【座談会参加者】

  • 南川明氏(日本調査部ディレクター):半導体業界を中心にエレクトロニクス産業全般を担当
  • 前納秀樹氏(コンサルティング・ディレクター):システムLSIを中心にIoT、クラウド、メディア関連エレクトロにクス産業の市場分析/ビジネス分析を担当
  • 李根秀氏(主席アナリスト):機器分解によるデバイスのコスト調査などを担当
  • 大庭光恵氏(シニアアナリスト):主に情報通信分野の市場分析/ビジネス分析を担当
  • 杉山和弘氏(コンサルティングアソシエイトダイレクター/主席アナリスト):半導体/エレクトロニクス産業全般の市場分析/ビジネス分析を担当

左から杉山氏、李氏、南川氏、大庭氏、前納氏


東芝メモリに対する危機感

前納秀樹氏 製品分解をしていると、もう一つ気付くことがあって。

 部品の中で、価格的に高いのはやっぱりメモリなんですよね。日系企業だとNAND型フラッシュメモリを持つ東芝メモリがある。

 Huaweiスマートフォンの上位機種に搭載されている部品のシェアは今のところ、日本メーカー、韓国メーカー、中国メーカーがちょうど3割ずつくらい。ここが今後、どうなっていくかが問題です。日中韓の部品で9割が構成されているということは、つまり米国製の部品はほとんどないということ。米Qualcommが強いアプリケーションプロセッサも、Huaweiは傘下のHiSiliconの「Kirin」を使っていますから。日韓メーカーに比べれば、米国メーカーへの影響は比較的少ないと考えられます。

 ソニーのCMOSイメージセンサー(以下、CIS)は、Xiaomiなど他のメーカーやスマートフォン以外のアプリケーションに転用できるから中長期的には大丈夫だと思いますが、問題はメモリです。東芝メモリがどうなるのか。

 CISの分野では、「ハイエンドCISは、ソニーにしかできない」という技術があります。一方で、NANDフラッシュの世界には、それがない。NANDフラッシュだけでいうと、Samsung Electronicsが生産量を増やして価格を下げれば、そこにシェアを取られる可能性があります。

 もっと言うと、OPPOなどのスマートフォンでは、DRAMとNANDフラッシュがスタックしているチップが使われている。このようなチップの採用が増えてくると、それに対してNANDフラッシュだけで勝負している東芝メモリはどうすればよいのか。

杉山和弘氏 ハイエンドの分野だけでビジネスをしていると、ローエンドの分野には入れないですからね。

前納氏 OPPOなどが、DRAMとNANDフラッシュが分離して搭載されるような機種を開発してくれれば、そこに東芝メモリが入る余地があります。ですが、今の機種はそうなっていないから……。

杉山氏 Appleに期待かな(笑)

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