米中の貿易摩擦に関連して、かつてないほど重大な速報が伝えられた。Broadcomによると、中国貿易の緊張によって、同社の2019年の売上高は20億米ドル減少する見込みだという。貿易戦争の最初の犠牲者は、米国の半導体産業になるようだ。
米中の貿易摩擦に関連して、かつてないほど重大な速報が伝えられた。Broadcomによると、中国貿易の緊張によって、同社の2019年の売上高は20億米ドル減少する見込みだという。貿易戦争の最初の犠牲者は、米国の半導体産業になるようだ。
Reutersの報道によると、Broadcomは2019年6月13日(米国時間)の四半期決算発表の中で、中国貿易の緊張とHuaweiとの取引禁止によって、「われわれの市場に不透明感が生み出されている」と述べた。Huaweiは同社の年間売上高の4%(約9億米ドルに相当)を占めており、収益の下落は「特定の一顧客を越えて拡大する」見込みだという。
Broadcomの衝撃的な予測によって、各半導体メーカーの次の四半期決算の不調は方向づけられたといえる。
半導体工業会(SIA)によると、Huaweiは半導体の買い手として世界第3位の地位にある。あるアナリストが先週初めにEE Timesに語ったところによると、他の中国メーカーは、貿易戦争に巻き込まれるのを避けるため、先を争ってヨーロッパや韓国、日本に部品のサプライヤーを見つけようとしているという。
米中間のこう着状態がどれほど強まっても、最初の犠牲者は米国の半導体メーカーになるとの見方が強くなっている。
現時点では、ドナルド・トランプ米大統領がこの貿易戦争で失ったものはほとんどない。地方の有権者や労働者階級を中心としたトランプ大統領の支援者は、今のこう着状態を強さの証だと見るだろう。中国が備えを固め、反応を強めたとしても、トランプ大統領は2020年の中間選挙で頼りにしている支持基盤において、さらなる共感を得ることになるだけだ。
サプライチェーンの改革に伴って、半導体産業はおそらく、取り返しがつかないほどの傷を負うが、貿易戦争で息絶えるということはないだろう。半導体企業や各州が全体的に政治的左派に寄っていることを踏まえると、半導体産業が被る被害は、トランプ大統領にとって容認可能な損失になる可能性がある。
一方で、中国はいよいよとなれば、Huaweiの損失を乗り切ることができる。貿易戦争は、半導体分野の構築という中国の戦略的なけん引力を加速させるケロシン(石油)のようなものだ。また、中国の政治家たちは、トランプ政権の強気な動きによって、アジアや欧州の同盟国が、米国から遠ざかる可能性も理解している。それらの同盟国には、米国政府に背を向けるか、降参して自国の民間事業を傷つけるかのいずれかの選択しかない。
貿易戦争で何も得をしないのは、半導体産業だけだ。もちろん、中国が降参し、“中国市場への参入とIP(知的財産)の権利行使の強化を許可する見返りとして技術移転を要求することは、終わらせる”とする合意書を、トランプ大統領に渡す可能性もわずかながらある。しかし、そうした取り決めによって、Huaweiの延命と政治的な立場を大きく損なうこと以外に、中国が何を得られるのか、筆者には分からない。
また、Washington Postが報じているように、国内の影響を緩和するため、トランプ政権が、貿易戦争によって最も影響を受けた一握りの米国の半導体メーカーに、Huaweiとの取引を可能にするライセンスを与える、という別の可能性もある。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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