ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)が、電子機器開発プラットフォーム「Renesas 365」の一般提供を開始した。ドイツで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2026」において記者説明会を開催し、その詳細を明かした。
ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)が、電子機器開発プラットフォーム「Renesas 365」の一般提供を開始した。同社が2024年に買収したAltiumの技術を基盤とする同プラットフォームは、デバイスの調査/選定からモデルベースのシステム設計、設計妥当性の初期検証、さらにはデバイスのライフサイクル管理に至るまでを単一のクラウド環境上で実現するものだ。同社はドイツで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2026」において記者説明会を開催し、その詳細を明かした。
近年の組み込みシステム開発では、分断されたワークフロー、手作業による部品検索、システム全体を俯瞰した設計判断の難しさが課題となっている。Renesas 365はこうした課題に対応するもので、デバイス選定、モデルベースのシステム開発、デバイスライフサイクルマネジメント、初期コンセプト検証を、単一の統合クラウド環境上で実現する。同社はこれを「業界初のエンドツーエンド電子機器開発プラットフォーム」と位置付けている。ルネサスは2025年3月にRenesas 365のコンセプトを発表していた。それから1年が経過した2026年3月11日、ついに一般提供を開始した。
ルネサスはRenesas 365の第1弾としてArmコア搭載の32ビットマイコン「RAファミリー」の550品種以上の情報を、統合開発環境「e2 studio」やソフトウェア開発キット(SDK)、各種開発ツールと共に統合した。同社は「モデルベースによる評価/最適化技術によって、Renesas 365は、システム全体の要件に基づいて最適なマイコンの選定を支援する、インテリジェントな設計環境として機能する」と説明している。
ルネサスは今回、一般提供開始の発表に合わせ、ドイツ・ニュルンベルクで開催された「embedded world 2026」で記者説明会を実施した。
説明会ではまず、同社エンベデッドプロセッシング担当バイスプレジデントのMo Dogar氏が登壇。Renesas 365が「今後の組み込み開発の在り方に影響を与えるものになる」と強調しつつ、開発の背景などを語った。
同氏は組み込み開発の環境が従来のハードウェア中心の設計から、ソフトウェア主導のアプローチに移行していると指摘した。そのうえで、アイデア創出から設計、検証、製造、さらには市場投入後の運用に至るまでの全工程を一貫したデジタル環境でつなぐことが重要だと強調。「開発ライフサイクル全体を通じて連続性を確保することが、これからの組み込み開発に不可欠になる」とした。
また、AIやクラウドコンピューティング、IoTといった技術を、いかに幅広い市場に届けるかという点も重要だとし、「そこで登場するのが『プラットフォーム』という考え方だ」と言及。同社が目指すのは、設計コンセプトから生産までをシームレスにつなぎ、ライフサイクル全体を管理できるプラットフォームの提供だと語った。そして、2024年に完了したAltiumの買収に触れ「PCB設計やデジタル設計分野で長年の実績を持つAltiumの技術が、このプラットフォーム(Renesas 365)の核となっている」とした。
さらにDogar氏は、ルネサスの重点領域として自動車、AIインフラ、エッジインテリジェンスの3分野を挙げた。自動車分野ではソフトウェア定義型車両(SDV)への移行が進む中で、半導体とソフトウェアの統合が重要になるとする。AIインフラ分野では、データセンターを中心としたデジタル基盤の高度化が進んでいて、AIがその変革をけん引していると説明。そしてエッジ分野では、日常生活を支えるデバイスの高度化が進み、より高い知能化が求められているとした。
一方、こうした技術の進展が開発現場に新たな課題ももたらしているとも指摘。「多くの設計がコンセプト段階や試作段階で停滞し、量産に至らないケースが増えている」と説明した。そしてその背景として、分断された開発環境やツール、AIと組み込み開発のスキルギャップ、複雑化する設計要件などがあると語った。
こうした課題を解決するには個別のツールを改善するだけでは不十分といい、Dogar氏は「現在の分断された開発環境を統合し、開発プロセス全体に一貫性を持たせることが重要だ。これにより設計サイクルの短縮だけでなく、収益化までの時間も短縮される。そして最も重要なのは、エンジニアが、本来の価値創造に集中できるようになることだ」と言及。こうした課題を踏まえ、Renesas 365の「プラットフォームとしてのアプローチ」によって、開発全体のデジタルな連続性を実現することが重要だとした。
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