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» 2019年07月01日 11時30分 公開

産業用ラズパイ+センサーが製造現場の自動化を加速ハーティング(2/3 ページ)

[村尾麻悠子,EE Times Japan]

産業用ラズパイの“立ち位置”

EETJ PLC業界の中には、産業用ラズパイがいずれPLCの領域に入ってきてしまうのではないかという懸念を抱いている人もいるようです。

能方氏 “コンピュータ”というくくりで言うなら、ラズパイもPLCも同じだ。ただ、低コスト化のスピード、性能向上のスピード、周辺機器が充実していくスピード――。この3つの点でPLCが産業用コンピュータに追い付けないというのは確かだろう。個人的には、10年くらいたてば“PLC”はなくなると考えている。正確に言うなら、PLCか産業用コンピュータか、という境界線が曖昧になっていくのではないか。今はまだ、PLCがそこまでオープンではないので、先ほど話したように半導体センサーなどを使うために産業用ラズパイのようなものが注目を浴びるようになってきているが、だんだん、それら2つの垣根はなくなってくると思う。

EETJ そうすると、産業用ラズパイの現在の立ち位置はどうなっているのですか。

能方氏 今の制御システムでは、PLCがあって、その上位に、生産管理や計画などのソフトウェアを入れた産業用コンピュータがつながっているという構成になっている。産業用ラズパイがこうしたシステムのどこかに入っていく、というわけではなく、PLCと産業用コンピュータの両方ができるところを、階層をなくして、ちょこちょこっとやりましょう、というイメージだ。

 そういう意味では、自動車工場のような、既に確立されている製造ラインには、産業用ラズパイは入らないだろう。それよりも、ドローンやクレーン、AGV(無人搬送車)など、特に外部とつながる必要はない機器でもっとセンサーを自由に使いたい、といった場合にラズパイのようなシングルボードコンピュータは強い。

 例えばドローンのフライトコントロールをしたい時。フライトコントローラーを製造しているのが中国のITメーカーだったりすると、そのフライトコントローラーにPLCのインタフェースなどない。EtherCATもModbusもない。そこでWeb系のプロトコルやMQTTでやりとりするという話になった瞬間に、もうPLCを使う方が大変になる。

 AGVの分野でも、PLCと産業用コンピュータで制御することが一般的だが、中国ではそれをシングルボードコンピュータ(ラズパイではない)に置き換える動きが活発になっている。シングルボードコンピュータを1つの金属ケースに入れて、ものすごくコンパクトに安く作っている。以前は、中国のAGVには必ずといっていいほど、SiemensのPLCが搭載されていた。その上位に産業用コンピュータがある。この場合は、センサー情報の取り込みは産業用コンピュータ、モーター駆動などはPLCといったように役割分担ができていた。それを統合して、インテグレーテッドコントローラーのようにするという動きがある。

ハーティング代表取締役の能方研爾氏

EETJ 産業用ラズパイも、そのような統合コントローラーになる可能性はありますか。

能方氏 あまり詳しくは話せないが、現在当社でそういったものを開発中だ。ラズパイは、PLCと産業用コンピュータの2つと比べるならば、どちらかと言えば産業用コンピュータに近い。そこで、われわれは、産業用ラズパイに制御の能力も加えることで、コンピュータとコントローラーを1台にしようとしている。ラズパイはI/Oがちょっと弱いが、ラズパイ用のI/Oモジュールがたくさんあるので、それを使えば済む。

 PLCの上位に座る産業用コンピュータのように難しい計算をさせるのではなく、ちょっとした簡単な計算をする機能と入出力を統合しようという場合は、ラズパイはコスト的には最も有利だ。さらに、ラズパイは周辺のソフトウェアが充実している。センサーメーカーも、ラズパイとArduino向けのドライバーは、取りあえず用意する。こうした状況を踏まえれば、シングルボードコンピュータを使うよりもラズパイそのものを使ってしまった方が、後々までメリットは多いと考えている。

 ただ、何万点もの制御を行うわけではないので、自動車やプラントといったラインはターゲットにしていない。

EETJ 産業用ラズパイに関連して、ハーティングが他に力を入れていることはありますか。

能方氏 半導体メーカーもカメラメーカーも、残念ながらFAにはフォーカスしていない。だが、FAのエンドユーザーは、裸の基板やチップを販売されてもどうにもできない。そこでわれわれが、基板を防水のケースに入れるなど、製造現場で使えるようにしている。

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