ワイヤレス給電技術を扱う米WiTricityは、報道機関およびアナリスト向けに開催されたシンポジウム「DX INITIATIVE 2019 〜モビリティ産業に見るデジタルトランスフォーメーション〜」(2019年7月26日)において、同社の技術や、電気自動車(EV)向けワイヤレス給電の動向などを説明した。
ワイヤレス給電技術を扱う米WiTricityは、報道機関およびアナリスト向けに開催されたシンポジウム「DX INITIATIVE 2019 〜モビリティ産業に見るデジタルトランスフォーメーション〜」(2019年7月26日)において、同社の技術や、電気自動車(EV)向けワイヤレス給電の動向などを説明した。
WiTricityは、米マサチューセッツ工科大学(MIT)で、磁界共振技術のワイヤレス給電技術を開発していた研究室のメンバーがスピンアウトして2007年に設立されたベンチャー企業である。ワイヤレス給電技術のライセンスやレファレンス設計の提供が、同社の主なビジネスだ。“ベンチャー”とはいえ、ワイヤレス給電の世界では名の通った企業であり、2011年にはトヨタ自動車と提携している。
2019年2月にはQualcomm/Qualcomm TechnologiesからEV向けワイヤレス充電システムである「Qualcomm Halo」に関連する一連の知的財産を買収した。これまでWiTricityとQualcommはワイヤレス給電規格をめぐり競争を繰り広げてきたが、この買収によって2社間での競争は終息したことになる。シンポジウムに登壇したWiTricityグローバルオートモーティブ&インフラストラクチャ事業開発担当エグゼクティブディレクターを務める岡田朋之氏は、「ライバルはケーブル(を使って行うDC急速充電)」だと語った。
ワイヤレス充電は既に民生向けの市販車にも採用されている。BMWの「530e」だ。欧州および米国カリフォルニア州で、試験的ではあるが商用化されている。
岡田氏は、「充電ステーションを探す手間を省くのが、ワイヤレス充電の基本的な考え方だ。クルマを駐車場にとめれば勝手に充電される。そうなれば、MaaS(Mobility as a Service)や自動運転車が本格化した時代になった時に、非常に便利ではないかと考えている」と述べる。
岡田氏によれば、WiTricityのワイヤレス給電技術は、既存の急速充電と同等レベルの効率で充電できるというのが最大の特長だという。位置ずれに強く、送電/受電間の距離が10〜25cmであれば充電できる。駐車場のコンクリートに埋め込んだり、雪が積もったりしても充電が可能だ。さらに、双方向充電(クルマと住宅の双方向で充電)にも対応している。
同氏によれば、今後2〜3年で、ワイヤレス充電に対応したEVが続々と市場に投入されていく予定だという。「まずはパーキングに、そしていずれはロボタクシーや自動運転車に使われていくと予測している」(同氏)
EV向けワイヤレス充電は新しい技術なので、エコシステムもこれから構築されていく段階だ。初期は、自動車メーカーが送電パッドも合わせて提供する形になるが、ある程度普及すればティア1が提供するようになるだろう。他にも、送電パッドを設置するインストーラーや、ワイヤレス充電システムを提供する充電ネットワークプロバイダー、電力会社といった、さまざまな業界がEV向けワイヤレス充電のエコシステムに参画することになると、岡田氏は述べる。
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