本シリーズの最終回となる今回は、次世代メモリの長所と短所をまとめる。既存のメモリ技術ではDRAM、NANDフラッシュが主流であり、少なくとも今後5年間はその地位が揺らぐことはないだろう。
2018年8月に米国シリコンバレーで開催された、フラッシュメモリとその応用製品に関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」でMKW Venture Consulting, LLCでアナリストをつとめるMark Webb氏が、「Annual Update on Emerging Memories」のタイトルで講演した半導体メモリ技術に関する分析を、シリーズでご紹介している。
なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
本シリーズでは過去15回にわたり、既存のメモリと次世代メモリの開発動向や市場動向などをご説明してきた。今回(最終回)は、そのまとめである。講演者であるWebb氏はまとめとして、次世代メモリの長所と短所を一覧表で示していた。取り上げた次世代メモリ技術は「3D XPointメモリ」「MRAM(磁気抵抗メモリ)」「ReRAM(抵抗変化メモリ)」「NRAM(カーボンナノチューブメモリ)」「FeRAM(強誘電体メモリ)」(新材料に限定)「Other(その他のメモリ)」である。
「3D XPointメモリ」の長所は、128Gビットと次世代メモリの中では、ずぬけて大きな記憶容量(シリコンダイ当たり)の高速メモリを量産品で実現していることに尽きるだろう。記憶容量はDRAMよりもはるかに大きい。ただし書き換えサイクルの回数には制限があり、アクセス速度はDRAMに比べて遅い。また一覧表には記述されていない重要な短所に、メモリ製品が販売されていないことがある。3D XPointメモリはIntelがSSDやHDDキャッシュ、メモリモジュールなどに組み込んだ形でしか、商業化されていない。この意味では、3D XPointメモリは「メモリ製品」ではない。
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