東芝は、ミリ波レーダーを照射して、衣服の下に隠し持った危険物を可視化できる「電波イメージング技術」を開発した。テロ対策など警備システムの用途に向ける。
東芝は2019年9月、ミリ波レーダーを照射して、衣服の下に隠し持った危険物を可視化できる「電波イメージング技術」を開発したと発表した。テロ対策など警備システムの用途に向ける。
これまで、駅や空港など公共スペースにおける警備やセキュリティ対策は、監視カメラや金属検知器などによる検査、係員による目視検査が中心であった。しかし、これらの方法だと、危険物を検知する機能が十分でなかったり、通行を妨げ利便性が低下したりするなど課題も多かった。
周波数が30G〜300GHzのミリ波は、直進性が極めて強く、雨や霧、雪など耐環境性にも優れている。これらの特長を生かしたのがミリ波レーダーである。車載用途では、離れた対象物との距離や速度、角度を測定するためのセンサーとして活用されており、自動運転や衝突防止を実現するためのキーデバイスとなっている。
今回東芝は、車載用途で高性能化と低コスト化が進むミリ波レーダーに着目し、この技術をセキュリティ対策用途に応用した。ミリ波は衣服を通り抜けるが、銃やナイフなどで用いられる金属では反射する。爆薬などの粉体は吸収する性質を持つという。こうした特性を利用し、通行人に照射したミリ波レーダーの反射信号を、面状に配置したアンテナで捉え、画像を生成する技術を開発した。
ただ、ミリ波レーダーを警備用として応用するにはいくつかの課題もあった。例えば、対象者以外の通行人が映らない画像を生成するためには、膨大なアンテナの設置とデータ量を処理することが必要になるという。東芝は今回、これらの課題を解決するための方式を新たに開発した。
具体的には、互いに素となる半波長(0.5λ:約2mm)以上の間隔で測定した2つのイメージング結果を合成すれば、虚像を打ち消しあうという特性を新たに発見した。これに基づき、1.5λ(約6mm)間隔で設置したアンテナと、2.5λ(約10mm)間隔で設置したアンテナを用意し、それぞれのアンテナで反射信号を測定して2つのデータを合成処理した。実証実験では、通行人が衣服の下に隠し持っていたモデルガンを可視化できることを確認した。
新たに開発した方法を用いると、照射するミリ波の0.5λ間隔で測定した場合と比べ、測定数を約7分の1に削減しても、高精細な画像を生成することができたという。このことは、アンテナやセンサーの設置数やメモリ容量の削減につながり、システム導入時のコスト低減が可能になるとみている。
東芝は、2020年以降にも鉄道会社やアミューズメントパークと連携して、開発したシステムの実証実験を行う計画である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.