人口増加や経済成長、テクノロジーの発展に伴って世界のエネルギー消費量が増加を続けるなか、省エネ化/低炭素社会のキーデバイスとなるパワー半導体に注目が集まっている。今回、IGBTをはじめとするパワー半導体の主要メーカー、三菱電機の執行役員、半導体・デバイス第一事業部長、山崎大樹氏に話を聞いた。
人口増加や経済成長、テクノロジーの発展に伴って世界のエネルギー消費量が増加を続けるなか、省エネ化/低炭素社会のキーデバイスとなるパワー半導体に注目が集まっている。今回、IGBTをはじめとするパワー半導体の主要メーカー、三菱電機の執行役員、半導体・デバイス第一事業部長、山崎大樹氏に話を聞いた。
――業績の振り返りをお願いします。
三菱電機のパワーデバイス事業については、2017年度から2022年度までの年平均売上高成長率を10%とし、2022年度の売上高目標を2000億円と定めている。2018年度の売上高は約1400億円と好調だった。今後、年平均成長率10%程度の成長を維持できれば、2022年度に目標の売上高2000億円を上回ることになる。
――好調の要因はどのように分析されていますか。
背景としては、自動車の電動化、電気自動車向けの需要が当初想定していたよりも早いペースで拡大していることが挙げられる。さらに民生向けの製品についても、われわれは特にエアコンのインバーター向けで高いシェアを保っているが、世界的な環境への配慮の高まりからインバータ化率の上昇が大きく見込める状況であり、こちらも当初予測より上回るとみている。こうした状況に伴って、一定程度の生産能力の拡大が必要となり、2018年に電子デバイスセグメントで約552億円の設備投資を決定した。このかなりの部分がパワーデバイス向けであり、当初より前倒しで生産能力拡大を進めている。
――パワー半導体市場の市況についてはいかがでしょうか。
先述したように、足元の市況観としては好調であり、着々と売り上げ拡大に取り組んでいる。ただ、先の展開については市場の先行きが不透明なこともありどういう形で能力拡大をしていくかは、現在の計画を継続的にレビューしながら進めていく。
パワーデバイスは産業向け、民生向け、自動車向け、そして、電鉄/電力向けの4分野に分けられる。われわれの売り上げにおける割合は産業、民生、車載がそれぞれ30%前後、電鉄/電力が残りの約15%となっているのだが、セグメントでみるとマーケットの好不調はある。
現在、民生向けは、特にエアコン向けを中心に需要が伸びているが、中国の動向が懸念点となっている。中国経済指標の弱含みを受け、中国景気の鈍化に対する警戒感が高まるなかで、中国のエアコン流通在庫も過去最高水準に達しているという話もあり、ある程度の変動は想定する必要があると考えて市場動向は十分に注視していく。ただし、環境配慮型の製品需要の高まりは、中期的には間違いのないトレンドだと考えている。また、欧州でも地球温暖化の影響や、ビル空調の高度化によって需要が拡大しているのも好材料といえる。
産業向けについては、米中貿易摩擦の影響などから中国の生産インフラ投資が停滞していること、また5G(第5世代移動通信)のインフラおよび対応スマートフォンのコンセプトが見えないこともあり関連投資が活発ではない。それに加えて、半導体全体が低迷の状況にあることも懸念点として挙げられる。これについてはパワーデバイス自体はあまり影響を受けていないが、メモリなどの設備投資がスローダウンした結果、インバーター、サーボについても全体的な需要が落ちたままという格好となっており、需要の回復時期について注視している。2019年下期には回復するという観測もあるが、なかなか先が読みにくい状況だ。
電鉄/電力向けについては、中国では公共投資に厚めに資源配分するという予算編成がされていることを背景に非常に強い。またインドやその他地域についても、電鉄への投資は現状非常にポジティブな動きになっていて、強い需要がある。
――設備投資の詳細について教えてください。
産業向けの需要が弱くなっているものの自動車、民生、そして電鉄向けが強く推移しているので、総合すると年平均成長率10%とする計画上にあるといえる。従って、投資については2018年に決定したものを着実に実行していく。
設備投資のうちで最も大きな配分となるのは、ウエハープロセスの能力拡大だ。これは2018年時点と比較すれば、2倍弱程度の能力拡大になる。一部の特殊装置は委託している海外のパートナー企業への貸与も必要ということで、海外と国内工場の両方で能力拡大を進めていく形だ。2022年の売上高2000億円という目標に対しては、現在の設備投資で対応ができると考えている。今後、市場の状況を見ながら一定程度の追加投資を行う可能性はある。
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